妹ばかり見ている婚約者はもういりません
 そう意気込みながらラウロ様の後についていくと、温室の端にたくさんの白い花が植わっている場所があった。

 愛らしい色と形の花だけれど、花びらも葉も元気を失ったように下を向いている。

「こちらがそのお花ですね」

「ああ。この花には強い解毒作用があって、過去に全身に出来た原因不明の痣を治した事例があるようなんだ。だから、どうしても育てて効果を試してみたいんだが……」

 ラウロ様は難しい顔になる。過去に痣を治した花。それはぜひとも蘇らせなければならない。

 私はしゃがみ込んで花壇と向き合った。そして花たちに向かって両手をかざし、光魔法をかける。

 光の粒が白い花に向かって降り注いだ。すると、萎れていた花は途端に瑞々しさを取り戻し、下を向いていた花弁や葉が上を向き始めた。

「……! 花が……!」

「よかった、成功したみたいですわ」

「すごいな、君は! ここまでの効果とは思わなかった!」

 ラウロ様は興奮した様子で言った。喜んでくれたようなので、私もなんだか嬉しくなる。

「いいえ、ラウロ様にしていただいたことに比べればこれくらい小さ過ぎるくらいです」

「いいや、本当に困っていたんだ。ありがとう。改めて君の能力は素晴らしいな」

 ラウロ様は真剣な様子でそう言う。あまりに真っ直ぐ褒められるので、なんだか照れてしまった。


「その光魔法は植物にだけ効くと言っていたけれど、草花を活性化させる以外にも使えるのか? もしあるならぜひ見せてもらいたいんだが」

 ラウロ様は興味津々な様子で尋ねてくる。

 あんまり熱心に聞いてくれるので、得意になってほかの魔法を使おうとしたところで、ふと嫌な記憶が頭をよぎった。


 以前、ルドヴィク様の家を訪れたときのこと。

 ルドヴィク様のご両親のティローネ伯爵夫妻は、植物に魔法をかける私を見て何度も褒めてくれた。私は得意になり、請われるままに色々な魔法を見せた。

 しかし、その後ルドヴィク様と二人になると、「そんなつまらない魔法をひけらかして恥ずかしくないのか?」と蔑んだように言われてしまったのだ。

 彼にそう言われた途端、私は自分の能力がとても小さなものに思えて、そんな小さな能力を得意げに見せたことが恥ずかしくなった。

 その時のことが頭を占めて、一瞬言葉に詰まる。

 しかしラウロ様の期待に満ちた顔を見て思い直した。ラウロ様がルドヴィク様と同じことを言うわけがないではないか。
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