妹ばかり見ている婚約者はもういりません
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 私、ジュスティーナ・ローレと、ルドヴィク・ティローネ様の婚約は、十歳の時に決まった。

 私の家はあまり裕福ではない平凡な子爵家だけれど、ルドヴィク様の家は古い歴史と広大な領地を持つ伯爵家だ。

 どうしてそんな私がルドヴィク様の婚約者になったかといえば、ルドヴィク様のご両親であるティローネ伯爵と奥様が、私の光魔法が植物によく効くという話を聞き、ティローネ家の持つ広大な農地をさらに発展させるのに役立てたいと思ったかららしい。


 私の家系には代々光魔法を持つ者が多く生まれる。

 光魔法といってもそれほど強い力ではなく、神殿で働けるほどの能力を持つ者が生まれるのは稀だ。

 けれど軽い怪我の治癒や疲れを癒すことは出来るため、周囲の人々から有難がられていた。


 私にも五歳のときに光魔法の力が発現した。しかし、なぜか私の魔法は人間には効かなかった。代わりに、私が光魔法を使うと、植物がどんどん元気になった。

 植物にしか効かない魔法だなんて、と両親はひどくがっかりしていた。

 しかし、私は昔から花や木の世話をするのが好きだったので、自分の力が大好きな植物に役立つと思うと嬉しかった。

 両親には苦々しい顔をされたけれど、私は毎日お庭に行って植物に力を送っていた。


 そんな私の能力を、ルドヴィク様のご両親、ティローネ伯爵夫妻は認めて必要としてくれた。

 私は嬉しくて、この力を磨いて将来は絶対に伯爵家の役に立とうと決めた。ルドヴィク様とも仲良くなって、一緒に領地のために頑張るのだと意気込んだ。

 両家で神殿に行き、神官様から婚約の印の契約石をもらったときはとても嬉しかった。

 私はその小さな赤い魔法の石を、毎晩宝物のように眺めていた。


 しかし、婚約者になったものの、ルドヴィク様は私に全く関心を持ってくれなかった。

 私が話しかけても興味なさそうに適当な返事をするばかりで、やむを得ず一緒にパーティーに参加するときなどは、面倒だという顔を隠してすらくれない。

 どうにか関係を良くしたいと家に呼んでみても、何かにつけて用事を付けて断られるだけだった。


 両親ははじめ、裕福なティローネ伯爵家との縁ができたことを喜んでいた。珍しく私のことも褒めてくれたくらいだ。

 しかし、私が全くルドヴィク様に関心を持たれていないのに気づくと、あからさまに失望した顔をした。

 これ以上ルドヴィク様の機嫌を損ねないようにときつく叱られたときは、ひどく胸が重くなった。

 ルドヴィク様との関係を改善する努力なんて、もうずっとして来たのだ。

 両親は私の気持ちなんて気にも留めず、延々とお説教を続けるだけだった。
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