妹ばかり見ている婚約者はもういりません
「ジュスティーナ嬢、怒っていないのか?」

「なぜ私が怒るのですか? 早速色々試してみましょうよ!」

 勢い込む私に、ラウロ様は戸惑い顔をする。

 すると、黙って私たちのやり取りを見守っていたエルダさんと、ドナートさんが近づいて来た。

「ジュスティーナ様、ありがとうございます! ジュスティーナ様が呪いを解くのに協力してくださるのなら、そんな心強いことはありませんわ!」

「ジュスティーナ様、どうかよろしくお願いします!」

「はい、任せてください!」

 ラウロ様は勝手に盛り上がる私たちを見て、目をぱちくりしている。

 私は気合を入れてラウロ様の前に立った。


「ラウロ様、少しかがんでもらえますか」

「え? ああ」

「失礼しますね」

 そう断ってから、ラウロ様の頬に手を触れる。瞬間ラウロ様の肩が小さく跳ねたような気がした。

 ラウロ様の痣の刻まれた頬は冷たくて、触れるとビリビリと小さな痛みが走った。呪いが関係しているのだろうか。

 私はそのまま光魔法をかける。

 私の魔法では人間の治癒は出来ないけれど、ロジータ妃が植物の魔法を使っていたのなら、もしかしたら効くことだってあるかもしれない。

 手元が光り、ラウロ様の頬の痣を撫でるように光の粒が舞った。

 どうなったかとどきどきしてラウロ様の頬を見る。しかし光が消えると、そこには依然として黒い蔦の文様があった。


「……効きませんでしたね」

 私はがっくりと肩を落とす。

 後ろで祈るようなポーズでこちらを見守っていたエルダさんとドナートさんも、悲しげな顔をしていた。

 しかし、ラウロ様本人は結果をわかっていたかのように苦笑いする。


「ありがとう、ジュスティーナ嬢。多分効かないのはわかっていたから大丈夫だ。今まで何人もの魔術師を呼んでもどうにもならなかったんだ」

「私が呪いを解けると思ったから呼んだのではないのですか……?」

「直接呪いを解いてもらうというより、君の魔法を見せてもらえば何かヒントになるんじゃないかと思ったんだ。これからもうちの植物に魔法をかけて、魔法を使うところを見せてもらえたらとてもありがたい」

 ラウロ様はそう言って笑う。

 痣に光魔法をかけたら解決するという簡単なものではないようだ。私は少し落ち込みつつもうなずいた。

「わかりました。呪いを解くための研究でしたらいくらでもつき合いますわ」

「ありがとう、ジュスティーナ嬢」

 ラウロ様は目を細めて言う。

 ラウロ様の表情は本当に沈んでいるようには見えなかったので、私は少しほっとした。
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