君のためにこの詩(うた)を捧げる
その日の帰り道。



七海はずっと騒いでいた。



「ねぇ、澪。あの人、絶対あんたのこと特別に見てるって!」
「ち、違うってば!」



「ほんとぉ~? なんかもう“少女漫画”じゃん!」



夕焼けに染まる街で、澪は立ち止まる。



隣で笑う七海の声。




そして校舎の窓から、ひとり見送る橘輝の姿。



(この秘密、どこまで隠し通せるんだろう――)




胸の奥が、甘く苦しく鳴る。




“芸能人の幼なじみ”との秘密の放課後は、まだ始まったばかり。



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