君のためにこの詩(うた)を捧げる
「ねぇ澪」



隣の七海が声をかけてくる。



「昨日、屋上で一緒にいたでしょ? 見ちゃったんだ、私」



「えっ……!」

心臓が跳ねる。



「大丈夫、誰にも言わないよ。ただ……ちょっと、羨ましくて」



七海は少し笑ってみせたけど、その目はどこか寂しげだった。



「私、ずっと橘くんのファンなんだ。だから……澪が羨ましいの、普通でしょ?」



「七海……」



「ごめんね、変なこと言って。でも……本当に仲良しなんだね、二人」


“羨ましい”の一言が、胸に刺さった。



(違うのに……そんな関係じゃないのに)



でも、何も言えなかった。


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