君のためにこの詩(うた)を捧げる
第5話「雨の夜、声だけが届く」
雨が降っていた。
放課後の廊下はしんと静まり返り、窓の外を叩く雨音だけが響いていた。
教室の灯りを消してから、澪はカバンを抱えて歩いた。
誰もいない昇降口。
傘立てに残った一本のビニール傘。
(あのニュースから、もう三日……)
あの日、輝は完璧な笑顔で
「彼女はいません」
と言った。
SNSでは
「プロ意識が高い」
「かっこいい」
と賞賛の嵐。
けれど澪の胸の奥では、 “いません”という言葉が何度も何度もこだましていた。
「……いません、か」
小さくつぶやいて、傘を開く。
冷たい雨粒が頬に触れるたび、心がざわめく。
放課後の廊下はしんと静まり返り、窓の外を叩く雨音だけが響いていた。
教室の灯りを消してから、澪はカバンを抱えて歩いた。
誰もいない昇降口。
傘立てに残った一本のビニール傘。
(あのニュースから、もう三日……)
あの日、輝は完璧な笑顔で
「彼女はいません」
と言った。
SNSでは
「プロ意識が高い」
「かっこいい」
と賞賛の嵐。
けれど澪の胸の奥では、 “いません”という言葉が何度も何度もこだましていた。
「……いません、か」
小さくつぶやいて、傘を開く。
冷たい雨粒が頬に触れるたび、心がざわめく。