しごできゲームプログラマ@奥村君は、距離感だけがSバグ級;;

0x03:この子どこの子!?

瑛斗(えいと)君がそんなことするなんて思わなかった……! なんでこの子作っちゃったの!?」

 田中 瑛斗君は去年新卒採用で入社した男の子である。
 なお、田中は社内にいっぱいいるので、名前で呼んでいる。

「ち、違うんです! だってオレ、知らなかったんスよ!」
「知らなかったからって良いわけがないでしょう……!」

 私はぺちん! っとディスプレイを叩いた。
 ……レモンうさぎのぬいぐるみの手で。

「すでにあるメッセージポップアップの画面、なんでもう一個作ってるの~~!!!」

 ディスプレイには2種類のメッセージポップアップが表示されている。
 片方は元々あったもので、もう片方は瑛斗君が知らずに作ってしまったもの。
 ……見た目はほぼ全然同じなんだけど。

「実はボタンが違うバージョンも作っちゃったんスよね」

 瑛斗君が開き直ってドヤ顔で言うけど、ダメ! 絶対!

「うちはもう間に合ってます! この子は捨ててきなさい!」
「そんな! せっかく作ったのに!」
「可哀そうだけど、これがこの子の運命なの!!」

 私がレモンうさぎのおててでぺちぺちディスプレイを叩いていると、通りがかった奥村君が変な顔をして問いかけてきた。

「……外川さんと瑛斗、なにやってるんですか?」

 なんかムッとしてるような、呆れてるような……それどういう感情?

「瑛斗君が私たちの知らないところで、いらない子作っちゃったの……」
「いらない子なんて世の中にはいないんスよ」
「とりあえず二人とも、落ち着いて」

 奥村君が間に入って私たち二人を宥めようとしている中で、隣からデザイナーの川畑さんがひょこっと顔を出して粒開いた。

「いらない子作っちゃったとか、何やってるのよ? オフィスラブ? 三角関係?」

「「「違う!!!」」」

 席に戻った瑛斗君は泣く泣く作った処理を直すのでした。

「ううっ。せっかく作った俺の息子が……」
「すまぬ……。だがこうするしかないんだ……」

 私も席に戻ってカタカタキーボードを叩いていると、不意に川畑さんが呟いた。

「プログラマの会話は外で聞くとちょいちょい危ないと思うのよね」
「そうかな?」
「たまに言ってるじゃない。死ねとか殺すとか。聞こえるたびに震えるんだけど……」
「SNSが落ちると言うじゃん。SNS死んでる! って。それと同じだよ」
「まあ……言うけど……。リアルに聞くとちょっと違うわよね。例えばこの前とか……」

『なんで……なんで死なないの……。殺してるのに死なない……。死んでよ……死んでよおっ!!』

 川畑さんが私のモノマネをした。

「わー。外川さんにめっちゃ似てるッスね!」
「そういえばそんなことを言ったかもしれない」
「怖いよ。メンヘラなの?」
「あれは死ぬはずの処理が動き続けてて……」
「あと他には……」

『くっ、殺せっ!!』

「なんて言ってたけど、くっころ女騎士なの?」
「外川さん、ひとりごと多いッスね」
「瑛斗君も負けないくらいひとりごと多いわよ?」
「えっ」

 静かに仕事しようかな……。
 しかし行く手を阻むものがあると、内に秘める思いが溢れんばかりに外に零れてしまうのだ……!

 しばらく静かに仕事をしていたところ、瑛斗君が声を上げた。

「センパーイ、止めたくない処理が死んでるんスけどー」
「瑛斗君の先輩はたくさんいるから、何人でも選べるドン!」
「奥村パイセン、君に決めたッス!」
「俺は瑛斗のモンスターなの?」
「戦闘力の高いパイセンッス!」

 ボケとツッコミを織り交ぜつつ、奥村君は面倒見が良いので話を聞きに行ってる。
 私もこの前お世話になったしねえ……。

「こいつが親でしょ? こいつを殺すと子も死ぬんだよ」
「親は生かしとかなきゃいけないってことッスか? でもこいついらないんスけど」
「こいつを親にしなきゃ良いんだよ」
「まさに生き別れってことッスね!」

 二人の会話を聞いた川畑さんが、すごい顔してる。

「だから怖いわよ。なんなの? マフィアなの?」

 ちなみに奥村君は後輩相手には溜め口である。
 先輩の私に対しては敬語だけど、扱いが後輩に向けた対応に似ている。
 ……だから、なんでえ?
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