Existence *
ガチャっと開く玄関のドア。

そこから美咲が姿を現し、女の子を抱きしめた。


「…何してんの?心配したんだから」


ホントに心配そうに抱きしめる美咲の姿にホッとする。

暫く抱きしめていた後、ハッと美咲の身体が動き、そしてその瞳が俺を捉える。

そんな美咲に俺は安堵の表情を浮かべて背を向けた。


「天野さん、入ってて」


ガチャリと聞こえた玄関のドアの音。


「待って!」


今にも車に乗り込もうとする俺の身体が美咲の声によって、必然的に止まり振り返った。


「あの、…ごめん。ありがとう」

「ううん」

「あの、私…」


言いにくそうに吐き出してくる美咲に、小さく息を吐き捨てる。


「入れよ。風邪ひくぞ。…じゃあな」


美咲の顔を見れただけで十分。

薄っすら笑みを向けて車に乗り込み、ドアを閉めようとした瞬間、


「待って。…翔」


美咲が表情を崩してその閉めようとしていたドアを阻止した。


「どした?」

「……」


俯く美咲を俺はジッと見つめる。


「…美咲?」

「…ごめん。何でもない」


戸惑ったように揺れ動く瞳。

何に迷って、何に悩んでいるのだろうか。

そんな風にさせてるのは俺だって分かってんのに、何もしてやれないこのもどかしさに苛々した。


「美咲が決めていいから」

「え?」

「一緒に居るか居ねぇかって事。正直、こうやってダラダラすんのも好きじゃねぇから」

「……」

「でも、美咲に対する気持ちは変わってねぇって事。それだけは言える」

「……」

「あの女とも話したから。悪いのは俺だって、そう思ってる。美咲を不安にさせた事は俺だから…」

「……」

「だから後は美咲次第。…もう風邪引くから入れよ。…じゃあ、」


未だ俯く美咲にそう言って、俺はドアを閉める。

そんな美咲から視線を外して俺は車を発進させた。
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