君が大人になった時、もしまだ俺のことが好きだったなら・・・
勇気を出して、そろそろと視線を上げて先生の顔をみた。

先生の目がまん丸になってる!!
めっちゃ驚いてる?!

「せ、センセ?」

ハッとした先生と目があう。

「小林…」
ププー!!
後方からのクラクションに先生は慌てて視線を前方に戻して、車は発進した。

先生、『小林』って呼んだ。
初めて呼び捨てにされた…名字だけど…嬉しいな…。

「・・・・」
「・・・・」

車内に沈黙が流れる。
カーステレオから流れてくる音楽だけが、ノリのいいリズムを歌っていた。

「小林?」
「は、はい!」
肩がビクッとした。

「ありがとな」
「え、いえ!」
先生が、何を言うのか緊張で、体が強ばる。

「はははっ。なんだ、その話し方は?」
「え?!えっと!」
なんて、答えればいいんだーーーー?!

「小林からしたら、深い意味はないのかもしれないけど、簡単に好きとか言っちゃ駄目だよ。
誤解されるぞ」
「え?」

「俺ですら、一瞬ドキッとしちゃったからな」
「簡単に言ってないよ」

「小林?」
「ずっと先生のこと、好きだったんだよ…。
先生もドキドキしてよ。
私の心臓は壊れちゃうくらいドキドキしてるよ。
先生もドキドキしてよ。
私のこと、好きになってよ」

「・・・それは、駄目だろう?」
「どして? どうして駄目なの?」


「・・・俺、先生だから」


「それは・・・先生じゃなかったら、私のこと好きってこと?」


「小林を生徒以上にみるつもりはないってこと」
「・・・」

「ごめんな。でも、ありがとな」

私はブンブンと首を振った。
グッと唇を噛んだ。
足の上で揃えた拳に握り締める。

けれど。

私の頬を伝う涙は止めることができなかった。



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