君が大人になった時、もしまだ俺のことが好きだったなら・・・
ピーピーピー。

電気コンロがお湯が沸いたと知らせ、自動でストップした。
けれど、俺は動くことができなかった。

小林が俺の首に抱きついている。
小林は俺の肩に顔を埋めた。


「‥‥私がもっと大人だったら‥‥」
そう言って歯を食いしばって震える彼女をそっと抱きしめた。


溢れだす気持ちを止められない。
いや、止めたくない。


「小林。俺、頼みがあるんだ」
「頼み?」

小林が俺の腕の中で動いた。
俺は小林を離さず、抱きしめたままでいる。
小林の温もりを離したくない。

「うん。
小林が大人になった時、もし、まだ俺のことが好きだったら、俺と付き合って欲しい」
「え?」

「どうかな?」
「うん。 いいよ。付き合う。
大人になったら先生と付き合ってあげるよ」

「あはは。ありがとう。
でも、その時はもう『先生』とは呼ばれたくないな」
「あ、そっか。じゃ、浅倉さん」

「随分と他人行儀だな」
「えーなんて呼ぶの?」

「名前で」
「え?」

「小林俺の名前知ってる?」
「‥‥知らない」

「あははは。ショックだわあ」
「ごめん!先生は私の名前知ってるの?」

「知ってるよ」


顔を少しずらし、
「・・・那奈」
と耳元で囁くと、小林がぎこちなく、ゆっくりと俺の方に顔を向けた。

互いの震える息がかかる程近くにある目が合った。



そして、そっとそっと・・・・・








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