この命のすべてで、君を想いたい
雫が笑うだけで救われた日が、
いくつもあった。




雫の「ありがとう」のひと言で、全部報われた夜もあった。



短い命なのに、
こんなにも痛い思いばかりだったのに、



それでも雫は――





「幸せだった」って、そう言ってくれた。











雫は、最後の呼吸をゆっくり沈めて、

もう二度と胸が持ち上がらなくなった。



その瞬間、


雫の頬に涙がひとつ落ちた。



それが俺の涙か、
沙月のか、裕大のか、蓮太郎のか――


もうわからなかった。




ただ、静かな病室の中で、

ぐしゃぐしゃに泣く声が混ざりあって、
温度だけが残っていく。





だけど最後まで、


雫のそばには、あたたかい涙の音だけが落ち続けていた。

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