仮面のアイドルの正体は、記憶を失った少年だった 「記憶を失った少年が、“仮面のアイドル”として生きる運命とは――?」

プロローグ

スポットライトが、世界のすべてを照らしていた。
眩しさの中、彼はただ一つの真実を胸に、マイクを握りしめる。

「――俺は、“宅麻大地”じゃない」

その言葉が、会場に、世界に、そして自分自身に突き刺さる。

光の先で誰かが息を呑み、誰かが涙をこぼし、誰かが黙ってその瞬間を見つめていた。
それでも、彼の声は揺るがない。

「黒瀬蓮。……それが、本当の俺の名前です」

与えられた“名前”。求められてきた“仮面”。
けれど、いま彼は――自分の声で、自分の言葉を選び取った。

拍手はない。歓声もない。
沈黙の海に、彼の想いだけが静かに浮かんでいる。

(あの日、君と見上げた光の先に――俺はようやく)

「……本当の“僕”になれたんだ」

ステージの端で、ひとつの影が寄り添っていた。
やさしい眼差しで見上げる彼女の瞳が、すべてを包み込む。

その夜、名を捨てた青年は――
心を取り戻す旅を、ついに終えたのだった。


 
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