仮面のアイドルの正体は、記憶を失った少年だった 「記憶を失った少年が、“仮面のアイドル”として生きる運命とは――?」
Scene16 はじめての幸せ
静かな夜の海。
遠くの街の灯りがにじみ、波の音がやさしく心を撫でていく。
砂浜の上で、ふたりは並んで座っていた。
「……風、気持ちいいね」
優香がぽつりと言う。
蓮は夜空を見上げ、小さく頷いた。
「うん……こんな時間、知らなかった」
「こんな時間?」
「誰かと、何も考えずに、ただ座っていられるような……
そんな時間があるなんて、思わなかった」
優香はそっと微笑み、彼の隣に少しだけ寄り添った。
肌がふれる距離。でも、まだ触れない。
「……じゃあ、大地くんにとって、今日は“はじめての夜”だね」
蓮はゆっくりと目を閉じ、夜風を胸いっぱいに吸い込んだ。
「……なんでだろ。今……すごく、生きてるって感じがする」
沈黙が流れる。
けれど、その沈黙さえも心地よくて、優香はそっと目を伏せた。
――気づけば、蓮の手が彼女の手に重なっていた。
おそるおそる、けれど確かに、そこにあるぬくもりを伝えてくる。
「……ありがとう、優香」
その声は、とても静かで、でも確かな響きを持っていた。
優香は彼の手を包み込みながら、心の奥に浮かぶ想いをそっと抱きしめる。
(……今の彼は、“宅麻大地”じゃなくて――本当の彼自身がここにいる)
(もしそれが幻だとしても、私はもう、後戻りできない)
波の音だけが、ふたりの時間を、静かに、やさしく刻んでいた。
遠くの街の灯りがにじみ、波の音がやさしく心を撫でていく。
砂浜の上で、ふたりは並んで座っていた。
「……風、気持ちいいね」
優香がぽつりと言う。
蓮は夜空を見上げ、小さく頷いた。
「うん……こんな時間、知らなかった」
「こんな時間?」
「誰かと、何も考えずに、ただ座っていられるような……
そんな時間があるなんて、思わなかった」
優香はそっと微笑み、彼の隣に少しだけ寄り添った。
肌がふれる距離。でも、まだ触れない。
「……じゃあ、大地くんにとって、今日は“はじめての夜”だね」
蓮はゆっくりと目を閉じ、夜風を胸いっぱいに吸い込んだ。
「……なんでだろ。今……すごく、生きてるって感じがする」
沈黙が流れる。
けれど、その沈黙さえも心地よくて、優香はそっと目を伏せた。
――気づけば、蓮の手が彼女の手に重なっていた。
おそるおそる、けれど確かに、そこにあるぬくもりを伝えてくる。
「……ありがとう、優香」
その声は、とても静かで、でも確かな響きを持っていた。
優香は彼の手を包み込みながら、心の奥に浮かぶ想いをそっと抱きしめる。
(……今の彼は、“宅麻大地”じゃなくて――本当の彼自身がここにいる)
(もしそれが幻だとしても、私はもう、後戻りできない)
波の音だけが、ふたりの時間を、静かに、やさしく刻んでいた。