七つの海を渡る愛 ~Love Ocean~


   * * * *


「……父さんがこんな状態だったら、今日はルイス王子の話はできそうにないね」

 母ロージーと一緒にバリーを両親の寝室まで運び、ベッドに寝かせたレイラはやれやれとため息をついた。
 ルイスから聞いた話は王国の根幹(こんかん)を揺るがし、レイラたち海賊の未来をも左右する重大な話だ。そのためレイラ一人だけでは消化しきれず、船長である父バリーにも聞いてもらいたかったのだが……。

「それに、あたしの部屋で王子が……、いや男が寝てるって知ったら父さん、カンカンに怒ると思う」

 むしろ、そちらの方が今は頭の痛い問題だった。「お前は俺のいない間に、男を連れ込んだのか!?」と、事情を知らない父が激怒するのが目に見えている。
 誇り高き海賊船長とはいえ、バリーも可愛い一人娘のこととなるとただの人の子、ひとりの父親なのだ。こと貞操(ていそう)問題には口うるさくなる。

「まあ、そのことはお父さんが目を覚ましたら、母さんがうまく話しておいてあげるわ。それよりレイラ、あなたは今夜どこで寝るの?」

「あたしはとりあえず、(なん)()に寝袋を持っていってそこで寝るよ。船の上でも寝袋で寝ることがあるから慣れてるし。それに、ケガ人の王子さまをベッドから追い出すわけにいかないでしょ」

「それもそうね。じゃあレイラ、お父さんのことは母さんに任せて、あなたは先に休みなさい」

「ありがとう、母さん。おやすみなさい」

 レイラは再び二階に上がると、寝袋を取りに行くために自室へ戻った。

「君の父上が帰ってきたのか? どうだった?」

「うん。帰ってきたけど、今日は酔い潰れて寝ちゃったから話はできなかったよ。ごめんなさい、王子」

「そうか……」

 レイラの答えを聞いて、ルイス王子はガックリと肩を落とす。

「できれば、君の父上――ブライス船長にもきいてもらいたかったんだが、そういうことなら仕方ない」

「本当にごめんなさい、あんな父で」

「いや、君が謝る必要はないよ。君は僕の命の恩人だし、お父上だってまさかこんなことが起きているとは思わなかったんだろう。したがって、お父上も悪くない。そうだろう?」

「……そうだね」

 この町の浜辺に王子が流されてくるなんて、誰にも予測できなかったことなのだ。

「あたし、納戸で寝るために寝袋を取りに来ただけだから。王子は何も気にせず休んでて。じゃあ、おやすみなさい」

「ああ、おやすみ。――レイラ、ありがとう」

 王子が礼を言った時の(なご)やかな笑顔に、レイラはなぜか胸の高鳴りをおぼえたのだった――。
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