愛を知らない御曹司は専属メイドにご執心
頼れる人

嫌がらせの理由

 話を聞けば聞く程どんどん高間さんの印象は崩れていき、私は彼を信じられなくなった。

 そして、

(告白してきたことも、嘘だったってことだよね……)

 嫌がらせをしていた犯人とも知らずに彼を頼り、彼に惹かれつつあったことを心底後悔した。

「――おい、大丈夫か?」
「え!?」
「顔が青い」
「……すみません……大丈夫です」

 真実が明るみになっていけばいく程、私は自分の人を見る目の無さに絶望し、私が高間さんと仲良くなったせいで父や母は勿論、お店にまで迷惑を掛けてしまっているのだと思ったら悔しくて悲しくて堪らなくなる。

「とにかく、落ち込んでる暇はねぇんだ。悔しい気持ちがあるなら当日、それを本人に直接ぶつけることだな。それじゃあ、俺は帰る」
「失礼致します」

 打ち合わせを終えた巴さんと如月さんはカメラを回収すると、早々に引き上げていく。

 見送る為に外へ出た私は、一言お礼を言おうと巴さんに声を掛けた。

「あの、巴様!」
「何だ?」
「あの、ありがとうございました」
「まだ片付いた訳じゃねぇんだから礼は早いと思うがな。まあ、その気持ちは受け取っておく」
「はい! 気を付けてお帰りください」
「ああ」
「それでは、当日もよろしくお願い致します」

 巴さんは相変わらずぶっきらぼうな物言いだけど、優しさは十分に伝わってきてそれが嬉しくなり、落ち込んでいた心に少しだけ光が灯った気がした。
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