勇者に婚約破棄された魔女は、魔王に婚約を申し込みに行きました。 ~かつて最恐と呼ばれた魔女の封印は、無知な勇者が解きました~
かつて【__】と呼ばれた魔女
「ジアンナ! 今、この時をもって、お前との婚約を破棄する!!!」

 暴れていた魔獣の討伐から帰って来た婚約者__ライアンは、帰ってくるなり、そう声を荒らげた。

 ライアンは、国を代表する『勇者』である。その隣には、彼と同じパーティーに所属する可憐な少女__魔導士のクレアが寄り添うように立っている。クレアの表情には、かすかな優越感が浮かんでいた。

(3週間ぶりに帰って来たと思ったら、何事なの?)

 ジアンナは、そんな2人の様子をただ静かに見つめていた。黒髪に、深紅の瞳を携えたジアンナは、紅茶の入ったカップを静かにソーサーに置いた。

「……そうですか。わたくしとの婚約を破棄されるのですね」

 ジアンナは表情一つ変えずに、ただ静かに問いかけた。ライアンは、あまりにも静かな声音に一瞬怯むが、すぐに気を取り直した。
 
「ああ、そうだ!お前との婚約は、国王の命令とはいえ、俺にとっては苦痛でしかなかった!魔力も、特筆する能力もないお前を、勇者である俺が愛するわけがないだろう!!俺が愛しているのはクレアだ!彼女こそ、俺の隣に立つにふさわしい強い女だ!」

 ライアンの言葉に、クレアは顔を赤らめ、嬉しそうにライアンの腕に抱きついた。

「ライアン様…!」

 ジアンナは、2人の茶番を冷めた目で眺めていた。
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