借金令嬢は異世界でカフェを開きます
 モリーが這いつくばるように外に飛び出そうとしたその瞬間、店のドアが開き外の冷たい空気が流れ込んだ。

「レディ・グレース。開店前に申し訳ないのですが……」

 そう言って入ってきたのは常連客のオズワルドだ。

 一瞬モリーは救世主が現れたと思ったが、気弱そうに見えるオズワルドの風体に胃がキリッと痛む。いや、せめて誰か助けを呼んでくれれば!

 モリーが祈るような気持ちでどうにか声を上げようとすると、ガラの悪い男たちが不快そうな声をあげるのが聞こえ身がすくむ。声をあげたいのに、実際にはハクハクと空気が漏れるだけだ。

「悪いな、にいちゃん。今日は休みだ。帰りな」

 大柄な男が追い払うように手を振るが、オズワルドはテーブルや椅子をなぎ倒すように倒れているグレースを見て、「グレース!」と叫んだ。
 そのまま彼は店に駆け込み、グレースを守るように男達との間に入る。

 投げ捨てられた眼鏡の奥の、意外なほど冷たい瞳に男たちがたじろぐのがわかった。モリーでさえさっきとは違う、冷たい刃を首筋に当てられたような恐怖を感じたくらいだ。いや、扉が閉まっているにも関わらず凍りつきそうな冷気があたりを流れている。

(これは魔法?! もしかしたらすごく強い人なのかも! お願いです、グレース様を助けて)
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