借金令嬢は異世界でカフェを開きます
でも当然のことながらスマホはない。
ぶっちゃけ本さえろくにない!
「調べものが気軽にできないのが、地味にきついわ」
グレースには家庭教師が付いていたものの、一般的な令嬢の教育しか受けていない。その教育も、日本風に言えば茶道と華道にお裁縫。あときれいな字を書けるのは淑女には大事なことだと主張する祖母の方針で、この国風のお習字。
付き合いに必要な貴族の名前や簡単な歴史くらいは習ったが、写真があまり一般的ではないので国王の顔も肖像画で見たくらい。
それよりもレディたるもの、美しく歌えたり楽器が演奏できた方がいいという父の方針で、グレースは洋風のお琴みたいな楽器を弾くことが出来た。ダンスも人並み程度にはできる。
さて、これで何ができるだろう?
あまりにもお嬢様すぎて、正直お金を稼ぐのに役立つものが思い浮かばず、ひたすら悩んだ。祖母いわく、ここはやはりお金持ちの高貴な人と結婚するのが一番だと言うが、グレースはよくても領地に恩恵があるかは謎だろう。
(そもそもそういう男性にはみんな許嫁なり婚約者なり、最低でも恋人くらいはいるものよ、おばあさま)
とりあえず売れるものはみんな売って借金を返したが、唯一大口の借金相手であるルイス・タナーからの借金は残ってしまった。利息が膨らみすぎて、ちょっとやそっとでは返せない額である。
タナーは父の喪が明ける一年待った後、現伯爵ではあるが子どものリチャードに向かって条件を出した。
「元々の期限である五年。それだけの時間をあげますよ」
弟の後ろで話を聞いていたグレースは一瞬ホッとしたが、タナーはいやらしい目をグレースに向け、ニヤッと笑うので鳥肌が立つ。