借金令嬢は異世界でカフェを開きます

「あのね、グレースさんは今二十一歳でしょう」
「はい」
「叔父様はね、二十八歳なの。驚いた?」
「いえ、それくらいかと薄々思ってました」
「ええ、残念。驚く顔が見られると思ったのに」

 本気で残念がっているキャロルが可愛くて微笑むと、ココンとドアがノックされ、彼女の母親であるリーアが、「はいはい、そこまで」と言いながら入ってきた。

「怪我人を休ませなきゃダメじゃないか」

 そんなことを言いながらも、リーアの目には笑いが滲んでいる。

「勝手に入ってきてすまなかったね。モリーには許可をもらったんだけど」
「いえ、とんでもないです。ありがとうございます」

 まるで騎士のように凛々しいリーアに頭を下げると、慈愛にあふれた顔で「怖かったね」と言われ、ふいに涙が浮かぶ。
 怖かった。そう、震えるのを必死でこらえなければならないほど怖かった。
 しっかりしよう、頑張ろう戦おうと思っていたのに、周りの人たちの優しさに胸が震える。一人で立つことが難しくなりそうで困ってしまう。

 怖くないと強がっても、リーアたちは分かっているという風に微笑むだけだ。しかも、「しばらく護衛に何人か寄こすよ」と言われ慌てて首を振り、傷が痛んでうめいた。

「そんなに頭を振るから。大丈夫、女性だけにするけど、腕っぷしの強いのを厳選するから」
「でもそんな」

 確かに夜は怖い。あの男たちがまた来るかもしれない。でもそこまでしてもらう理由はないのだ。

「あー、レディ・グレース。この話はもう少し後にするつもりだったんだけど、これは礼の一つだと思ってくれ」

 リーアの言葉に戸惑う。

「あなたの考案した下着でキャロルは元気になっただろう。あれを私は今度事業展開するつもりなんだ」
「まあ!」

 新たなランジェリーショップが生まれることにグレースは顔を輝かせた。
 自然に健康な体をサポートする柔らかいコルセットや、体に合うブラやショーツ。それが簡単に手に入れば、世の女性たちに喜ばれるに違いない!

「だからこれから、色々なアイデアを提供してもらうことへの前払いってことでどうかな?」

 リーアがいたずらっぽい顔で右手を差し出すので、グレースはにっこり笑ってその手を握り返した。

「ではお言葉に甘えます。ありがとう、リーアさん!」
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