渋谷少女A続編・山倉タクシー
国境なき医師団の矢島栄子
もはや逃げも逃げならず男らはようやく諦めたようだ。しかし俗に云う観念したという様子ではない。「ちっ」と舌打ちして口を噤んだだけである。さてもこれからどうなることやら、満身創痍ながら私も警察署(たぶん荒川警察署)に同行せねばならないだろう。山倉には悪いことをしてしまった。ここに来て霧が薄らいで来たようで夜空を見上げれば満月が垣間見えた。そう云えば今は中秋の名月の候だった。
「…任意同行から逮捕に切り替えるぞ!」と悪党どもを制した巡査長と思しき警官から「じゃあ全員道路に降りて。車に乗って」と誘われる。しかし私だけは「あんただいじょうぶか?歩けるか?」と聞かれた。「はい…」と言葉を詰まらせる私に「あんただけは救急車で病院に行ってもらうから。いいね?」と告げられる。「その方がいいよ、田中さん。取り調べの方はさ、あとでぜんぶ俺が伝えるから。な?じゃ行こう。降りよう」と肩を貸す山倉に「ああ、すまないな。あんたにとんだ迷惑を掛けちゃって…」と云い差したあとしかし私は彼を止め「あの、お巡りさん…こちらの女の人も、さっきあの男からお腹を蹴られてますよ」と巡査長に注意を促し、件の男を指し示した。さらに傍らに居るビアクと呼ばれたその女性に「あの、あんたも病院に行った方が…」と呼びかける。しかしビアクはにべもなく「ううん。いいよ、あたしは。平気だ。栄子を一人だけにできないよ。応援するからね。おじさん、行って。病院に。ね?」と笑顔で返してくれる。この時始めて名前を聞いた栄子という名の連れの女性と巡査長にも同じことをビアクが告げる。かなり気丈な女の子…いや、女性のようだ。
【渋谷少女A子の生まれ変わり?NGO・国境なき医師団の医師たる矢島栄子のイメージ。pixabay様から拝借しました】
「…任意同行から逮捕に切り替えるぞ!」と悪党どもを制した巡査長と思しき警官から「じゃあ全員道路に降りて。車に乗って」と誘われる。しかし私だけは「あんただいじょうぶか?歩けるか?」と聞かれた。「はい…」と言葉を詰まらせる私に「あんただけは救急車で病院に行ってもらうから。いいね?」と告げられる。「その方がいいよ、田中さん。取り調べの方はさ、あとでぜんぶ俺が伝えるから。な?じゃ行こう。降りよう」と肩を貸す山倉に「ああ、すまないな。あんたにとんだ迷惑を掛けちゃって…」と云い差したあとしかし私は彼を止め「あの、お巡りさん…こちらの女の人も、さっきあの男からお腹を蹴られてますよ」と巡査長に注意を促し、件の男を指し示した。さらに傍らに居るビアクと呼ばれたその女性に「あの、あんたも病院に行った方が…」と呼びかける。しかしビアクはにべもなく「ううん。いいよ、あたしは。平気だ。栄子を一人だけにできないよ。応援するからね。おじさん、行って。病院に。ね?」と笑顔で返してくれる。この時始めて名前を聞いた栄子という名の連れの女性と巡査長にも同じことをビアクが告げる。かなり気丈な女の子…いや、女性のようだ。
【渋谷少女A子の生まれ変わり?NGO・国境なき医師団の医師たる矢島栄子のイメージ。pixabay様から拝借しました】