部長と私の秘め事
《今日、チェックアウトしたあとにお茶する?》
お誘いすると、少ししてから返事がくる。
《ごめん。涼さんともう少し話すつもりでいる》
「よーしよしよしよしよし……」
動物王国の王様のような声を出していると、スマホで決済していた尊さんが「どうした?」と目を丸くする。
「恵と涼さんがいい感じなんですよ」
「そっか、なら良かったけど」
「あぁ~! 恵が乙女になってると思うと、可愛くて可愛くて……!」
スマホを抱き締めて体をもだもだ揺すると、尊さんはクシャリと頭を撫でてきた。
「あまりいじめてやるなよ? 中村さんは結構照れ屋っぽいから」
「うんうん、了解してます」
そんな会話をしたあと、そろそろ時間が迫ったので部屋を出る事にした。
「おはよう!」
一階に着いて恵と涼さんを見つけた私は、彼女に手を挙げる。
「おっ、……おはよう……」
恵はいつにない挙動不審さで返事をし、何も言っていないのに赤面してソワソワしている。
「涼さんもおはようございます」
「おはよう、朱里ちゃん」
挨拶をした涼さんは、尊さんとも「おはよ」と挨拶し合っている。
ホテルを出る前に四人での写真を撮る事にし、近くにいたスタッフさんに撮影をお願いした。
外に出て駐車場に向かって歩く途中、涼さんが切りだした。
「朱里ちゃん、ごめんね。今日このあと恵ちゃんを借りるよ」
「はい! 喜んで!」
元気に居酒屋みたいな返事をすると、恵がギューッと私の腕を組んできた。
怒ったようなその横顔は、すでに真っ赤だ。
それぞれの車のほうへ別れる時、私はポンと恵の肩を叩いた。
「また今度、連絡して」
「……分かった」
恵は「何か言いたいけれど今は言えない」という表情をして、私のほうを未練たっぷりに見る。
それから尊さんにペコリと頭を下げた。
「篠宮さん、ありがとうございました。お陰様でとてもいい思い出ができました。今度何かお礼をさせてください」
「そんなのいいって。俺は朱里が喜んでくれたらそれでいいんだから」
尊さんはヒラヒラと手を振り、ニヤッと笑って付け加えた。
「連休明けからまた仕事頑張ってくれ」
「……あぁ、……現実……」
私と恵がズン……と落ち込むと、彼はケラケラと笑って「行くか」と先に歩き始めた。
「涼、またな。中村さんを宜しく」
「了解」
男同士はサラッと挨拶をし、私たちはその後、それぞれの車を停めてある場所に向かった。
「……大丈夫かな」
「大丈夫だろ。無事に今朝を迎えて、大人しく涼と一緒に過ごすって決めたあたりで、大体の答えは出てる」
「そうですね」
「いい大人なんだから、落ち着いた頃に話を聞く程度でいいと思うぜ。まずは中村さんが色々体験してみないと」
「……うん」
頷いた私は、心の中で「頑張れ、恵」とエールを送って車に乗った。
**
涼さんの白いランクルの助手席に座った私は、落ち着かず膝の上で手を組む。
「カフェにでも行く? ゆっくりできる所あるかな」
ハンドルを握った涼さんは、さらに格好良く見える。
朱里が篠宮さんの車に乗った時、『駐車する時、ドキドキする』と言っていたのを聞いて、『そんなテンプレートな……』と思っていたけど、今なら気持ちが分かる。
「それともうちに来る?」
お誘いすると、少ししてから返事がくる。
《ごめん。涼さんともう少し話すつもりでいる》
「よーしよしよしよしよし……」
動物王国の王様のような声を出していると、スマホで決済していた尊さんが「どうした?」と目を丸くする。
「恵と涼さんがいい感じなんですよ」
「そっか、なら良かったけど」
「あぁ~! 恵が乙女になってると思うと、可愛くて可愛くて……!」
スマホを抱き締めて体をもだもだ揺すると、尊さんはクシャリと頭を撫でてきた。
「あまりいじめてやるなよ? 中村さんは結構照れ屋っぽいから」
「うんうん、了解してます」
そんな会話をしたあと、そろそろ時間が迫ったので部屋を出る事にした。
「おはよう!」
一階に着いて恵と涼さんを見つけた私は、彼女に手を挙げる。
「おっ、……おはよう……」
恵はいつにない挙動不審さで返事をし、何も言っていないのに赤面してソワソワしている。
「涼さんもおはようございます」
「おはよう、朱里ちゃん」
挨拶をした涼さんは、尊さんとも「おはよ」と挨拶し合っている。
ホテルを出る前に四人での写真を撮る事にし、近くにいたスタッフさんに撮影をお願いした。
外に出て駐車場に向かって歩く途中、涼さんが切りだした。
「朱里ちゃん、ごめんね。今日このあと恵ちゃんを借りるよ」
「はい! 喜んで!」
元気に居酒屋みたいな返事をすると、恵がギューッと私の腕を組んできた。
怒ったようなその横顔は、すでに真っ赤だ。
それぞれの車のほうへ別れる時、私はポンと恵の肩を叩いた。
「また今度、連絡して」
「……分かった」
恵は「何か言いたいけれど今は言えない」という表情をして、私のほうを未練たっぷりに見る。
それから尊さんにペコリと頭を下げた。
「篠宮さん、ありがとうございました。お陰様でとてもいい思い出ができました。今度何かお礼をさせてください」
「そんなのいいって。俺は朱里が喜んでくれたらそれでいいんだから」
尊さんはヒラヒラと手を振り、ニヤッと笑って付け加えた。
「連休明けからまた仕事頑張ってくれ」
「……あぁ、……現実……」
私と恵がズン……と落ち込むと、彼はケラケラと笑って「行くか」と先に歩き始めた。
「涼、またな。中村さんを宜しく」
「了解」
男同士はサラッと挨拶をし、私たちはその後、それぞれの車を停めてある場所に向かった。
「……大丈夫かな」
「大丈夫だろ。無事に今朝を迎えて、大人しく涼と一緒に過ごすって決めたあたりで、大体の答えは出てる」
「そうですね」
「いい大人なんだから、落ち着いた頃に話を聞く程度でいいと思うぜ。まずは中村さんが色々体験してみないと」
「……うん」
頷いた私は、心の中で「頑張れ、恵」とエールを送って車に乗った。
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涼さんの白いランクルの助手席に座った私は、落ち着かず膝の上で手を組む。
「カフェにでも行く? ゆっくりできる所あるかな」
ハンドルを握った涼さんは、さらに格好良く見える。
朱里が篠宮さんの車に乗った時、『駐車する時、ドキドキする』と言っていたのを聞いて、『そんなテンプレートな……』と思っていたけど、今なら気持ちが分かる。
「それともうちに来る?」