部長と私の秘め事
(睫毛なっっっっが!!)

 私は無言で目を見開き、涼さんの美貌を凝視する。

 目を開けている時は生き生きとした美に溢れているけれど、寝顔はまた違う雰囲気で美しい。

(このまま美術館に展示されててもおかしくない……)

 涼さんはキリッとした眉毛をしているのもあり、寝ていても顔面力がある。

(私なんてぼやけた寝顔だったしな……)

 いつだったか朱里がいたずらで私の寝顔を写真に撮った事があり、それを見た時はガッカリした。

(朱里は寝ていても可愛いのにな。……っていうか、涼さんに寝顔見られたんだろうか?)

 そう思うとギクッとする。

「あ」

 不意に自分が下着を穿いている事に気づき、私は小さく声を漏らす。

(穿かせてもらってたー!!)

 私は心の中でムンクの『叫び』状態になり、硬直する。

(あああああああああ……)

 私はうつ伏せになり、バフッと枕に顔を埋めて無言で悶える。

 すると、楽しげな涼さんの声がした。

「……けーいちゃん。おはよ」

 低くて艶のある声を聞いてビクッと肩を震わせた私は、おずおずと顔をずらして彼のほうを見る。

 すると寝起きからバッチリ美形の涼さんが、私を見て微笑んでいた。

 朝から眩しい!

「なんて顔してんの」

 涼さんは私の髪をクシャッと撫でてくる。

「……涼さんって朝から美形なんですか? 二十四時間営業? もうちょっと休んだほうがいいですよ」

 照れながらそう言うと、涼さんは「あはははは!」と声を上げて笑った。

「恵ちゃんは朝から面白いね」

「そんな事ありません」

「かーわいい」

 涼さんは私をギュッと抱き締めたあと、額にキスをしてきた。

「さて、起きようか」

 そう言って涼さんが起き上がると、鍛えられた上半身が露わになり、私は思わずガン見してしまう。

(この人、着痩せするタイプだった……)

 私の兄二人も、体育会系で鍛えているタイプだけれど、涼さんは胸板の厚みが違う。

 その上肌もとても綺麗で、腋毛もない。

 よく見てみると、朝陽に照らされた横顔もツルンとしていて、産毛がないように見える。

 ほーっ……と見ていると、涼さんがこちらを見て笑った。

「どうかした?」

「……いえ、綺麗だなぁ……と思って」

 ぼんやりしたまま答えると、彼はクスッと笑って私の頭を撫でてきた。

「ありがと。いつもはそう言われても特に何とも思わないんだけど、恵ちゃんに言われると嬉しいな」

「……あ、すみません。見た目を褒められるの、嫌でしたか?」

 私は布団で胸元を隠したまま尋ねる。

 ベッドから下りた彼は、上半身は裸だったけれど下はスウェットズボンを穿いていた。

 ……そういえば、色違いのパジャマをプレゼントしてもらったばかりなのに、着ないで寝てしまった。

「うーん、嫌だとは思わないかな。嬉しくもないし、何とも思わない。言われすぎて慣れてしまった感じだ」

 普通なら容姿を褒められたら嬉しくなるものだろうけど、何とも思わなくなるぐらい言われまくった人は、こういう感じになるんだ……。

 少し困惑した顔をしていたからか、涼さんはニコッと笑った。

「でも今言った通り、恵ちゃんに言われると嬉しいよ。初めて『この顔に生まれて良かった』って思えたし」

「……ならいいんですが」

 ホッとして言うと、涼さんは悪戯っぽく笑ってウインクした。

「俺は恵ちゃんの顔が大好きだけどね」

「な……っ、何言ってるんですか。私の顔なんて平々凡々盆踊りですよ」

「なんで盆踊り」

 涼さんは私の言葉にツボり、朝からお腹を抱えて笑っている。

 落ち着いたあと、彼はサラリと私の髪を撫でた。

「恵ちゃんは自分が思っているよりずっと、魅力的だよ」

 そんじょそこらの女性よりずっと美形な涼さんに言われて、喜んでいいのか分からないけれど、とりあえず「ありがとうございます」とお礼を言っておいた。

「ひとまず昨日買った服を着たら? ちょっと見繕ってくるね」

 涼さんはそう言って、一度寝室を出ていった。
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