部長と私の秘め事
「も……っ、もういいです! 十分ほぐれたので!」

「遠慮しなくていいよ」

「あっ、…………あー…………」

 いつまでもしつこくお尻を揉んでいると思いきや、涼さんの手は上に移動し、腰を揉んでくれる。

 彼の言う通り、調理室での実験があるとはいえ、その他は大体デスクワークだ。

 コラボ商品を作る時は外回りをしたり、打ち合わせで出かける事もあるので、足の疲れから全身への歪みやらがきていると思う。

 でも忙しくてマッサージに行けていないので、こうやって揉んでもらえると、とても気持ちいい。

「気持ちええ~~~~…………」

 だからつい、おっさんみたいな声が出てしまった。

 ハッとした時にはもう遅く、涼さんは私の体の両側に手をつき、俯いて笑いを堪えている。

「いっ、今のなし!」

 仰向けになった私は、真っ赤になって両腕でバツを作る。

 けれど涼さんは俯いたままクツクツと笑ったあと、滲んだ涙を片手で拭って私に笑顔を見せた。

「いいね! ほんっと、恵ちゃん好き!」

 …………うん。またなんか変なスイッチ入れちゃった……。

 私は諦めて菩薩のような微笑みを浮かべる。

「可愛いなぁ、本当に」

 涼さんは隣に寝転び、私の後頭部に手を当てたかと思うと、軽くキスしてきた。

「食べちゃいたいぐらい、可愛い」

 彼は甘く掠れた声で言ったあと、ツツツ……、と私の太腿を指先で辿ってきた。

(あれぇ……?)

 私は額にキスされながら、涼さんの喉仏を見て目を見開く。

(おっさんみたいな声を出したのに、どうしてこうなった?)

 心の中で問うも誰も答える人なんていない。

 不思議で堪らなくて、状況に思考がついていっていないのに、涼さんの手が太腿をまさぐってくるたび、私は唇から「んっ」と色めいた声を漏らしてしまう。

 やがて下着のクロッチにトンと指先が当たり、私は真っ赤になって硬直し、目を見開いていた。

 涼さんは私を抱き込んだまま額に唇をつけ、何かを考えているように、クロッチにトン……、トン……、と指先を当てる。

「~~~~っ」

 その振動だけで感じてしまっている私は、ドキドキと高鳴っている胸の鼓動が彼にバレないよう、必死に祈った。

「…………欲しい?」

 これ以上なく緊張していたところ、耳元で囁かれ、心臓が口から飛び出そうになる。

 私は答える代わりに、両手でギュッと涼さんのパジャマの胸元を掴んだ。

「言ってくれないと分からないよ? ここは熱を持ってるみたいだけど」

 涼さんはヒソヒソと囁き、グッ……とクロッチに指を押しつけた。

 私は少しの間、どうすべきか迷って黙っていたけれど、彼の胸板に額をつけてボソッと言う。

「……ちょっとだけ……、なら」

 返事をしたあと、そろっと涼さんを見上げると、彼は目を細めて笑みを深めていた。

 ――なんか、まずい事言ったかもしれない……。

 後悔しそうになった時、彼は私の手をとると、こちらを見つめながら恭しく手の甲にキスをする。

「喜んで」

 涼さんはもう一度キスをしたあと、私のパジャマのボタンに手を掛け、ポツポツと外していく。

 その下はまだスリップを着ていたので、彼は「脱げる?」と言って裾を捲ってくる。

 高級な下着を破いてはいけないので、私は涼さんの手の動きに合わせて、お尻を浮かせたり上体をもたげたりした。

 やがて無事にスリップが脱がされたあと、彼はブラのホックを外し、ショーツに両手を掛ける。

「……どうせなら……、お風呂に入ったあとのほうが……」

 全裸になると思うと羞恥が増し、私は往生際悪くそう言った。

「ん、いいよ。一緒に入ろうか」

 先延ばししたというのに涼さんは嫌な顔一つせず、ブラをとったあと私を抱き上げ、バスルームに歩いて行った。

 私たちがレストランに向かっている間、涼さんがやったのか、ホテルスタッフがやったのか分からないけれど、バスタブにはすでになみなみとお湯が溜まっていた。

 涼さんはさっさと脱いでしまうと、筋肉に恵まれた美しい体を堂々と晒してバスルームに入っていった。
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