部長と私の秘め事
「泡の王国!」

「あはははは! じゃあ、俺は国王になろうかな。恵ちゃん王妃ね」

 涼さんは笑いながら私の背中も洗い、ついでと言わんばかりにお尻をニュ……と掴んでくる。

「ん……っ」

「大事な部分は丁寧に洗わないとね」

「やっ」

 そう言って涼さんは、尾骶骨から指を滑り下ろしたので、私はとっさに声を上げて距離をとる。

(無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理。そこは無理)

 そのままだと、デリケートゾーンに到達する前に触れられたくない部分に至ってしまう。

 後ろでする行為があるのは知っているけれど、まだノーマルセックスとはなんぞや、も知らない私にはハードルが高すぎる。

「無理にはしないよ。ただ綺麗にするだけ」

「……いつかはしたいって思ってるんですか?」

「恵ちゃんが受け入れるならね。いま言ったように、望まないならしないよ」

 落ち着いて言う涼さんは、私の知らない間に色んな事を経験していそうだ。

「……誰かとした事あるんですか? 気持ち良かった?」

 ボソッと呟くように尋ねると、涼さんは私の顔を覗き込んできた。

「……気になる?」

 まるで試されているように感じ、私はギュッと唇を引き結ぶ。

「……嫉妬する羽目になるなら、聞きたくないです。涼さんは〝経験〟するの大好きだから、掘ったり掘られたり、色々やったんだろうなーって思っておきます」

「ちょっと待って!? 掘ったり掘られたり!? そ、それは聞き捨てならないな!?」

 涼さんが焦ったのを見て、私はここぞとばかりに、むくれた顔をして攻めてやる。

「涼さんが〝人気者〟なのは分かってますよ。私なんてノーマルセックスをするので精一杯で、免許皆伝してる涼さんの足元に及ばない、白帯ですから」

「話が膨らんだね? ついでに何をすれば師範代?」

「……んー……、四十八手コンプリート?」

「あっはははは! それはなかなか師範代になれる人、いないんじゃないの?」

「えっ? 恋人同士って、まず四十八手をコンプリートするもんじゃないんですか?」

「逆に誰から聞いたの? その情報。ネタならともかく、実際にやる人あんまりいないと思うけど」

 涼さんに聞かれ、私は朱里ではない女友達を思い出す。……アンニャロウ……。

「…………この話はお蔵入りという事で……」

 目を逸らして誤魔化すと、涼さんはシャワーヘッドを手にして、泡まみれになった私の体を流し始めた。

「恵ちゃんは純粋だから、あちこちでからかわれてるんじゃない? 今どき希少な天然記念物みたいな女の子だから」

「切手になりそうですね」

 私はナキウサギを思いだして言う。

「そういえば、自分の好きな写真やイラストを切手にできるサービスあったよね。あれで俺と恵ちゃんのラブラブ切手作って、結婚式の招待状とかに貼ろうかな」

「後生ですからやめてください。ぶっ」

 両手を合わせて本気でお願いすると、頭からジャー……とシャワーを掛けられた。

「バスチェア、座って。髪洗ってあげる」

「はい……」

 私は一旦涼さんからシャワーヘッドを借りて、座る所を洗ったあと、ストンと座った。

「話は戻るけど、明日のショッピングで欲しい物、本当にない? 一つぐらいは恵ちゃんのほしい物をプレゼントしたいんだけど」

 涼さんは優しく髪を洗いながら尋ねてくる。

「んー……、お陰様で色々満たされていて……。もともとあんまり物欲がないほうですし」

「俺とお揃いのアクセサリーをつけようって言ったら、やだ? あんまり目立たない指輪とか」

「……一目見て高価な物って分からない物ならいいですけど……」

「よし、じゃあ指輪を買おう」

 涼さんは機嫌良さそうに言い、シャカシャカと私の髪を洗ってトリートメントもつけたあと、「あとで流すからバスタブに浸かってて」と言い、自分も髪を洗い始めた。

(豪華だなぁ……)

 夜景を見下ろすジェットバスに浸かった私は、泡で体が隠れるのにホッとしつつ、窓から外を眺める。

「お邪魔します」

 ボーッとしていると涼さんがバスタブに入ってきて、私は緊張して端に寄る。

「お嬢さん、近う寄りなさい」

「どこのエロ代官ですか」

「いいね、エロ代官。町娘の恵ちゃんを囲って奥さんにしちゃう」

 涼さんはそう言うと、私を後ろから抱き締め、チュッと頬にキスをする。

「それにしても、前から言おうと思っていたけど、ちょっと育った?」

 彼はそう言いながら、私の乳房を両手で包んできた。
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