部長と私の秘め事
 涼さんはいつも私の事を〝猫〟と言っているけれど、彼のほうこそ高級な大型犬のように思える。

 どこから見ても死角がないように思えるほど、綺麗に磨き上がられた美貌に肉体。

 ずっと朱里が美容に気を遣っているのを見ていたり、最近自分でも少し気にするようになったから分かるけれど、美を保つってとても大変だ。

 涼さんがなるべく朝ランし、空いている時間はジムやプールにも通っているのは知っている。

 髪を整えているのは勿論、『役員は営業みたいなものだから』と、人に見た目で判断される事を念頭に置き、眉毛や爪もサロンに行って整えている。

 人間だから汗をかくのは当たり前だけれど、夏場は相当匂いに気を遣っているみたいだ。

 涼さんといる時はいい匂いしか嗅いだ事がなく、常に綺麗に整った彼しか知らない。

 という事は、それを他人に見せないように水面下で努力し続けているという事になる。

 しかも涼さんは「こんなに努力して美意識高い俺、凄くない?」みたいな押しつけをしない。サラッと当然のように美しいのだ。それもまた凄いと思う。

 そんな綺麗で凄い人を、私が独り占めしていいのかな……、と毎回思ってしまう。

「可愛い、恵ちゃん」

 涼さんは首筋から鎖骨へと、優しいキスをしながら、独り言のように囁く。

 彼に「可愛い」と言われると、相変わらず慣れていなくてムズムズする。

 でも少しずつ、こうやって愛される事に慣れてきた気がする。

 以前はガチガチに固まって、何をどうしたらいいのか分からなかったけれど、今は涼さんの髪や背中を撫でる程度の事はできるようになった。

「……脱がせてもいい?」

 上目遣いに尋ねてくる涼さんを見て内心で「ずるいな」と思いつつ、私は小さく頷く。

「ありがとう」

 彼はチュッと私の額にキスをすると、ゆっくりとパジャマのボタンを外していった。

 やがてパジャマの前身頃が左右に開かれ、ショーツ一枚の姿が露わになる。

(……恥ずかしい……)

 両手で胸元を隠し、膝を擦り合わせて下腹部を隠そうとした時、涼さんはトン、と胸の谷間に指を置いた。

 何も言わず、ただそれだけの動作。

 なのに、まるで「動かないで」と言われたように感じた私は、無意識に動きを止めてしまっていた。

 微かな衝撃を受けた部分が、心臓に近いからというのもあったからだろうか。

 速くなっていた鼓動がいっそう高鳴り、涼さんの指の感覚を得て乳房の感覚が敏感になったように思える。

(う……、わ……)

 遅れてゾワッと鳥肌が立ち、プツンと先端が硬くなっていくのが分かる。

(~~~~っ、恥ずかしい……っ)

 カーッと赤面して胸元を隠したい衝動に駆られたけれど、涼さんにジッと見つめられているせいか、体が動かない。

 三日月涼という男は、生まれ持っての〝持てる人〟で、支配者階級にいる人だ。

 そこにいるだけでオーラがあるし、人の目を惹きつける美貌を持ち合わせている上、相応の立ち居振る舞いを心得ている。

 だからなのか、彼が鷹揚な雰囲気で見つめてくるだけで、次に与えられる命令を待たなければならない気持ちになる。

(……何か言ってよ……)

 恥ずかしくて堪らないのに、何もする事ができない。

 ジワジワと羞恥と焦燥感が高まり、呼吸までもが荒くなってきた頃――、彼はツツ……と指を動かして胸の膨らみを辿ってきた。

「ん……っ」

 刺激を求めている場所の近くに触れられ、期待した私は思わず胸を突き出してしまう。

 けれど涼さんは焦らすように先端付近を撫で、胸元に優しいキスをし続ける。

「……あの……」

 彼の髪を撫でながら、震える声をかけると、涼さんは「ん?」と微笑む。

 ――敵わないなぁ。

 私は諦念を抱きながら、羞恥を押し隠してねだった。

「…………触って……」

「ん、勿論」

 涼さんはニコッと笑ったあと、本格的に私を愛撫し始めた。。





 沢山啼かされた私は、涙を流してブルブルと震える手で力なく涼さんの手首を掴んだ。

「ん、よしよし。気持ち良かったね」

 彼はトロンとした表情をする私にキスをし、頭を撫でてくる。

「…………もうやだ…………」

 気持ち良すぎてベソベソと泣いてしまった私は、手で目元を拭う。

「嫌なの?」

 涼さんによしよしと頭を撫でられ、優しい声で尋ねられ、私はつい甘えたくなって抱きついてしまう。

「……気持ち良すぎるの、恐い……」

 呟くと、彼は私の額にキスをしてきた。
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