部長と私の秘め事
「いつもコースだから、ラストは好きな物を食べようと思って。とりあえず気になった物、なんでも頼んでいいから、みんなでシェアして食べよう」
「わあぁ……」
感動のあまり泣きそうになっていると、恵から「チョロいからやめなって」と注意されてしまった。
そのあと、飲み物をオーダーしてからワクワクしてメニューを覗き、小龍包、蒸し鶏にクラゲ、フカヒレスープに北京ダック、夢のフカヒレ姿煮込み、空芯菜の炒め物、麻婆豆腐にエビチリ、エビマヨ、アワビのクリーム煮、牛リブロース、あんかけ焼きそばにカニ五目炒飯など、みんなで分けて食べた。
ラストに杏仁豆腐とマンゴープリンで迷っていたら、尊さんに「迷うぐらいなら両方いけ」と許可をもらったので、二つとも美味しくいただいた。
最後にスタッフさんに記念写真を撮ってもらい、それぞれの家に帰る事になる。
帰りは〝ついで〟で、三田のマンションまで送ってもらう事にした。
上条さんが運転している車は、メルセデス・マイバッハS600プルマンというらしく、どういう訳か後部座席で私たちは向かい合わせで座っている。
勿論、運転席との間には仕切りがあり、それを透明、不透明のオンオフもできるという、セレブ仕様だ。
「今回は沢山ありがとうございます」
帰りの車の中で涼さんにお礼を言うと、彼は「ナンクルナイサー」と笑う。
「朱里ちゃんの何やかやは尊持ちだし、纏めて払うのも、かわりばんこみたいな感じだし、お互い様だよ。それに俺のほうこそ、朱里ちゃと尊がいてくれて良かった。少しずつ慣れてきてくれているとはいえ、誕生日を盛大に祝おうと頑張っても、二人きりだったらまだ上手くいかない可能性があったから」
涼さんが言うと、恵は決まり悪そうな顔をする。
「責めてる訳じゃないからね。恵ちゃんが一筋縄でいかないニャンコなのは分かっているし」
その時、尊さんが付け加えた。
「涼は大体、どんな状況になっても楽しんでるから、気にしなくていいと思う」
「……はい」
恵はシュンとしているけれど、その気持ちも何となく分かる。
私もこういう盛大な〝誕生日祝い〟をされたら、受け取っていいんだか、どうやってお返しをしていいんだか、分からなくて困ると思う。
しかも尊さんも涼さんも、絶対に恩着せがましい事を言わないし、愛情で応えてくれればいいと言ってくれる。
もしも私が芸能人みたいな美女で、彼女にする事で物凄いステータスのある存在なら、もっと自信を持って「自分にはその価値がある」と思えるかもしれない。
でも私も恵も一般人なので、隕石みたいな大きさの愛情アタックをされても、レシーブしきれないのだ。
恵の気持ちが分かる私は、彼女の手をキュッと握った。
「ちょっとずつでいいと思うよ。ホラ、私たち恋愛偏差値低いじゃん! ……恵のほうが付き合った人数は多いけど、本当に好きになった人がいないっていう意味では、どっこいどっこいだし。私もまだ尊さんとの生活に慣れていってる途中だし、恵はもっと日が浅いじゃん。すぐ慣れない事を、そんなに引け目に感じる事はないと思う」
「……そんなポジティブに、恋愛偏差値低いって言わなくてもいいと思うんだけど……」
恵に突っ込まれ、私は「えへへ」と笑う。
そのあと彼女は溜め息をつき、やや真面目トーンで言った。
「自分でもちょっと可愛げがないなと思って、反省はしてるんです。私が悪いのは分かってて、どうやって改善したらいいかも分かってます。……ちょっとずつ慣れていくので、もう少し猶予をもらえたら」
「うん、全然いいよ。佳苗さんにも『一年は同棲期間をもうけて、お互いの価値観とか色々擦り合わせないと』って言われたしね。女の子を前に焦る男じゃないし、恵ちゃんのペースで慣れていって」
「……ありがとうございます」
こうやって見ると、涼さんは余裕のある男性なんだなぁ……と感じるけれど、私が知らない、恵と二人きりの時は意外とそうでもないのかもしれない。
と言っても、二人の〝仲良しタイム〟を想像するのは失礼なので、やめておくけど。
二泊三日の間、美味しかった物や花火やプラネタリウムの感想を言い合っているうちに、車は三田のマンションに着いた。
「ありがとうございました! 恵、またね」
「ランチまた一緒にできそうだったら、メッセージちょうだい」
「おけ!」
手を振ったあと、車は静かに発進する。
「はぁ……、濃密な三日間でしたね。おうち帰るの久しぶり!」
「わあぁ……」
感動のあまり泣きそうになっていると、恵から「チョロいからやめなって」と注意されてしまった。
そのあと、飲み物をオーダーしてからワクワクしてメニューを覗き、小龍包、蒸し鶏にクラゲ、フカヒレスープに北京ダック、夢のフカヒレ姿煮込み、空芯菜の炒め物、麻婆豆腐にエビチリ、エビマヨ、アワビのクリーム煮、牛リブロース、あんかけ焼きそばにカニ五目炒飯など、みんなで分けて食べた。
ラストに杏仁豆腐とマンゴープリンで迷っていたら、尊さんに「迷うぐらいなら両方いけ」と許可をもらったので、二つとも美味しくいただいた。
最後にスタッフさんに記念写真を撮ってもらい、それぞれの家に帰る事になる。
帰りは〝ついで〟で、三田のマンションまで送ってもらう事にした。
上条さんが運転している車は、メルセデス・マイバッハS600プルマンというらしく、どういう訳か後部座席で私たちは向かい合わせで座っている。
勿論、運転席との間には仕切りがあり、それを透明、不透明のオンオフもできるという、セレブ仕様だ。
「今回は沢山ありがとうございます」
帰りの車の中で涼さんにお礼を言うと、彼は「ナンクルナイサー」と笑う。
「朱里ちゃんの何やかやは尊持ちだし、纏めて払うのも、かわりばんこみたいな感じだし、お互い様だよ。それに俺のほうこそ、朱里ちゃと尊がいてくれて良かった。少しずつ慣れてきてくれているとはいえ、誕生日を盛大に祝おうと頑張っても、二人きりだったらまだ上手くいかない可能性があったから」
涼さんが言うと、恵は決まり悪そうな顔をする。
「責めてる訳じゃないからね。恵ちゃんが一筋縄でいかないニャンコなのは分かっているし」
その時、尊さんが付け加えた。
「涼は大体、どんな状況になっても楽しんでるから、気にしなくていいと思う」
「……はい」
恵はシュンとしているけれど、その気持ちも何となく分かる。
私もこういう盛大な〝誕生日祝い〟をされたら、受け取っていいんだか、どうやってお返しをしていいんだか、分からなくて困ると思う。
しかも尊さんも涼さんも、絶対に恩着せがましい事を言わないし、愛情で応えてくれればいいと言ってくれる。
もしも私が芸能人みたいな美女で、彼女にする事で物凄いステータスのある存在なら、もっと自信を持って「自分にはその価値がある」と思えるかもしれない。
でも私も恵も一般人なので、隕石みたいな大きさの愛情アタックをされても、レシーブしきれないのだ。
恵の気持ちが分かる私は、彼女の手をキュッと握った。
「ちょっとずつでいいと思うよ。ホラ、私たち恋愛偏差値低いじゃん! ……恵のほうが付き合った人数は多いけど、本当に好きになった人がいないっていう意味では、どっこいどっこいだし。私もまだ尊さんとの生活に慣れていってる途中だし、恵はもっと日が浅いじゃん。すぐ慣れない事を、そんなに引け目に感じる事はないと思う」
「……そんなポジティブに、恋愛偏差値低いって言わなくてもいいと思うんだけど……」
恵に突っ込まれ、私は「えへへ」と笑う。
そのあと彼女は溜め息をつき、やや真面目トーンで言った。
「自分でもちょっと可愛げがないなと思って、反省はしてるんです。私が悪いのは分かってて、どうやって改善したらいいかも分かってます。……ちょっとずつ慣れていくので、もう少し猶予をもらえたら」
「うん、全然いいよ。佳苗さんにも『一年は同棲期間をもうけて、お互いの価値観とか色々擦り合わせないと』って言われたしね。女の子を前に焦る男じゃないし、恵ちゃんのペースで慣れていって」
「……ありがとうございます」
こうやって見ると、涼さんは余裕のある男性なんだなぁ……と感じるけれど、私が知らない、恵と二人きりの時は意外とそうでもないのかもしれない。
と言っても、二人の〝仲良しタイム〟を想像するのは失礼なので、やめておくけど。
二泊三日の間、美味しかった物や花火やプラネタリウムの感想を言い合っているうちに、車は三田のマンションに着いた。
「ありがとうございました! 恵、またね」
「ランチまた一緒にできそうだったら、メッセージちょうだい」
「おけ!」
手を振ったあと、車は静かに発進する。
「はぁ……、濃密な三日間でしたね。おうち帰るの久しぶり!」