それでは旦那様、私と賭けをいたしましょう
 でもその時は、今みたいに心から愛する人がいなかったから簡単にできた決断である。
 今は同じ決断ができるか、正直なところ怪しい。

「馬鹿ね。さっき言ったでしょう。あなたと私の家に帰りたいって」
「ああ。ただ俺が勝手に不安になっていただけだ。あなたのことになるとだめなんだ。許せ」
「私はもう、あなたがいないと生きていけないくらいなのよ?」

 上目で挑発的に口にすれば、ロランが口角をひくつかせた。

「俺に三度目の忠告をさせる気か」
「あなたはどう?」
「やめてくれ。参った。俺だってミレッラがいないと生きていけない」
「私のこと、最後まで責任持って愛してくれる?」
「あなたしか愛せないんだから、当たり前だ」

 ふふ、と彼の腕にしがみつく。

「私も、あなたしか愛せないわ」
「ミレッラ」
「だから、ねえ。誓いの口づけくらいなら、許されるんじゃない?」

 最初の夜の、彼と同じ文句を囁いた。
 そう、愛を誓うなら、いるかもわからない神ではなく、自分が決めた、愛する人に――。
 彼が観念したように息をこぼしてから、眉尻を垂れ下げて笑った。

「ああ、誓おう。どんな時もあなたと共にあり、あなたを幸せにすることを」
「私も、あなただけを愛し続けると誓うわ」
 ふたりだけの密やかな誓いが、互いの唇に甘く溶け込んだ。
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