転生聖女〜現代日本に転生したら、勇者と魔王も同じクラスだったのでクラス替えお願いします

67.おいしいケーキと、いつも並んで歩いてきた人

 家に帰ると、ぐったりしたルイと、満面の笑みのママが出迎えてくれた。


「やっぱ男手があるといいわね。部屋がピカピカになったわあ」

「相変わらずシスターは厳しいぜ。何度ダメ出しを食らったか」

「あはは、ケーキ買ってきたから、一緒に食べよう。ママの分もあるよ」

「あら嬉しい。お茶をいれるわね」


 私はママと台所に向かった。

 リオンはダイニングでルイと何か話していた。

 ケーキとお茶を持って行くと、よくわからない顔でルイが私を見上げた。


「……あのさ」

「うん?」

「えっと、ダメだ。上手く言えない」

「ルイ、一緒にケーキ食べよう」

「えっ、うん」

「ルイにクリスマスプレゼントも買ってきたよ」

「マジか、ありがと」

「はいはい、お茶もいれましたから、みんなでいただきましょうね」


 四人であれこれ喋りながらケーキを食べた。

 おいしい!

 真野さんも夜にケーキを持ってきてくれるって言ってたし、楽しみだなあ。

 食べ終えた後は、リオンがママと片付けに行ってくれた。

 たぶん気を遣ってくれたんだろう。


「ルイ、ちょっと話そうか。ママー、コンビニで明日の朝ごはん買ってくるー」


 家を出て、エレベーターと反対、非常階段の踊り場に出た。

 さっきは一階だったからそうでもなかったけど、最上階は風が強くて寒い!!


「ごめん、思ったより寒かったわ」

「エミリは前世から、そういう抜けてるとこあるよな」


 ルイは笑って私を抱き寄せた。

 私はポケットから、さっき買ってきたプレゼントを取り出す。


「あのね、私とお揃いのブレスレット。ミサンガっぽいデザインだから、普段使いしやすいと思うけど、どうかな」

「ありがと、嬉しい。……リオンにめっちゃ自慢されたんだけどさ」


 ルイは嬉しいような困ったような顔でブレスレットを受け取った。


「その、いろいろ、キスしたこととか」

「それね。ルイもしたいと思う?」

「思うよ、そりゃ。……でも、エミリがリオンを選んだんなら」

「ルイ、魔王に騙されてるよ、それ」


 つい笑ったら、ルイがぎょっとした顔になった。

 懐かしい。

 魔王やその配下に騙される度にこの顔を見て肩を落としたり、呆れて笑ったりしていた気がする。


「キスはした。けど、リオンを選んではいない。ルイもリオンも選べなくて困ってるって言った」

「……あの野郎!」

「だからねえ、ルイもしたければしていいよ」

「エミリは?」


 ルイがふと真剣な顔で私を見た。


「エミリは、俺とキスしたいと思ってくれてる?」

「思ってるよ」

「よかった。じゃあ、えっと……失礼します……」


 真剣な顔が一瞬で真っ赤になって、冷や汗までかいてルイは私の肩に手を乗せた。

 目を閉じると、肩に乗った手に力が入る。

 少しして、温かいものが唇に触れた。


「ごめん、ちょ、緊張してどうしていいかわかんない」


 目を開けたら、顔を真っ赤にした勇者がへたり込んでいた。


「しっかりしてよ。魔王まで倒した勇者なのに」

「結局倒せてねえしさ。あの、後日リベンジさせていただいても、いいでしょうか」

「あはは、いいよ。じゃあコンビニ行こうか。ママと私の朝ごはん買わなきゃ」


 まだしゃがみ込んでいるルイの手を引いた。


 並んで歩くとルイの方が背が高いのに、前世で孤児院でルイと手をつないでいたことを思い出して、無性に切なかった。
< 68 / 69 >

この作品をシェア

pagetop