ビタースイート・ドロップ~次期社長の甘い嘘~
「素敵です。むしろ、こちらのほうがお店に入ってみたくなります……ただ、このスタイルで店内のすべてが統一されていたら、『この店、変わったんだな』と感じると思います」
「うん。那須野さんなら、どう〝変わった〟と感じる?」

 ときおり相槌を挟んでいた沓澤代理が、最後の言葉だけは明らかに三浦さんに向けて放った。

「木乃田店は、昔ながらの雰囲気を好んで足を運ばれる方も多くいらっしゃいました。若いお客様の中にも、その雰囲気を楽しまれる方はたくさんいらして」

 三浦さんは、最初こそ険しい顔をして私の話を聞いていた。
 けれど、次第にそれが和らいでいくさまが確かに見えた。わずかな安堵とともに、私はなんとか話を続ける。

「もちろん、新しい要素を取り入れることは大切だと思います。ですが、当社がこれまで培ってきたものも、一緒に大切にしていけたらいいなとも思います。……現場を離れて一年になりますので、あまり参考にならないかもしれませんが、私からは以上です」
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