大好きだった元彼と再会しましたが、私はもう結婚しています。

「でも、気になって仕方ないのは本当だから。な、お願いだ」

 彼がそっと私の頬に触れる。私はその手に自分から頬ずりした。

「ありがとう、穂高」

 彼はスーツケースを持ち、「すぐに必要なものは他にない?」と聞いた。

 私自身のことも、私の部屋もよく知っている彼だ。
 本当にすぐ必要なものは完璧にスーツケースに詰まっている。

「大丈夫」
「じゃあ、行こう」

 差し出された彼の手を掴むとすごく暖かい。

 私は穂高と元夫との差に、自分がしてしまった間違いを余計に痛感していた。
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