夢幻に消えた君と、存在しない約束の続きを。
「――。見せたかったのってこれ?」
目の前に広がっていたのは、秋の陽光を透かし、真珠のように輝くピンク色の群生。
凛とした空気を纏い、どこか儚げでありながら、それでいて周囲の紅葉を圧倒するほどの生命力を放っている。
季節外れの奇跡、あるいは自然が見せる悪戯か。
その正体は、咲き誇る桜だった。
「うん!桜だよ!綺麗でしょ?」
「⋯⋯あぁ。すごく、綺麗だ」
桜の花びらは小さく、繊細。
高く澄んだ青空を背景に、それはまるで降り積もったばかりの淡雪が枝に引っかかっているようにも見える。
「――幻みたいだね」
二人の声が重なり、見つめ合ったあと笑いあった。