拝啓、愛しのパイロット様

「おはようございます」

 乾から遅れること五分。
 オフィスエリアに足を踏み入れた小町は、朝の挨拶をしてからデスクに着席した。
 ムーンライト文具の本社があるこのオフィスでは、総勢二百人ほどが働いている。
 小町は営業部の所属で、文房具店や書店への法人営業を担当している。
 外出することも多いが、今日は一日デスクワークだ。
 トートバッグをデスクの下にしまうと、ノートパソコンを開き、電源ボタンを押す。
 パソコンが起動するのを待つ間に、愛用の万年筆とメモ帳をデスクの引き出しから取り出し、その日のタスクを洗い出す。
 スマホのメモ機能を使う人も多いが、小町はいつも手書きだ。
 手書きの方が頭の中が整理される気がするし、単純に万年筆で文字を書くのが好きだからだ。

(今日は、見積もりが二件と、来月のフェアの準備と……)

 ボーナスを費やし、奮発して購入した高級万年筆は書き心地も抜群だ。
 これで文字を書くと、自分の字が少しばかり綺麗に見える。
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