推しと奏でる、私たちの唄 〜ドS天才歌手の隣は甘くて難しい〜
第2章 走り出しなくなる瞬間
スタッフとメンバーが揃い、全体共有ミーティングが行われていた。
チーフマネージャーの杉本が資料を手に前へ出る。
「では続いて、車のCM案件の説明に入ります。
Shorelineの新曲書き下ろしと出演依頼が正式に来ました。テーマは“走り出しなくなる瞬間”です」
室内の空気がほんの少し引き締まる。
CMのための書き下ろし楽曲は、一ヶ月後のCM撮影までに完成させる必要があり、
CMはShorelineと今注目の若手女優・水沢 心結《ミズサワ ミユ》さんとの共演のようだ。
「以上が大まかな流れです。
夏、曲の件どう?」
「……分かった。」
たった一言。
だけど、会議室の空気が一気に軽くなる。
……たった一言なのに、
みんなが安心してる……?
「よろしく。」
夏は短い言葉だけ残して部屋を出ていった。
呆気に取られる灯里に、蓮と柊が話しかける。
「皆もうあれだけで“ちゃんと仕上げてくる”って分かるんだよ。
新曲ができる前提でスケジュール組まれてるのも、もう普通のこと。」
「そうそう。
夏が動けば、作品はちゃんと形になる。
それがShorelineの当たり前なんだよね。
……プレッシャー、相当なはずなのに。」
新曲ができなきゃ何も始まらないのに……
それを背負ってる人なんだ、夏さんは。