『ドレスに宿る誓い』―Elara & Lanois 王国を変えた仕立て屋たち―
「エルヴィン様……」

「だから、俺のそばに置いておきたかった。
君の手が描いた“俺”を、いつでも見られるように。」

その声音は優しく、甘く、深くて――
まるで愛の告白そのものだった。

シルヴィアはこらえきれず
エルヴィンに抱きついた。
彼は片腕で絵を守りながら、
もう片方の腕でしっかりと彼女を抱きしめる。

「ありがとう、シルヴィア。
最高の絵だ。俺の宝物だよ。」

二人の胸の間で、
絵の包みが温かく挟まれる。

――この瞬間、
シルヴィアは自分が本当に
“創作する側の人間”になったのだと実感した。

その後のシルヴィアは、
個展が評判を呼び、
数日後からぽつぽつと
アトリエに依頼の手紙が届き始めた。

・夫婦の記念日の肖像を描いてほしい
・亡き母の思い出の絵を修復してほしい
・自分の大切な“原風景”を絵にしてほしい

大きな案件ではないが、
どれも心の奥に触れるような
温かな依頼ばかり。

リディアも目を細め、
「いいじゃない。あなたの絵が、誰かの心にちゃんと届いた証よ」
と微笑むのだった。

シルヴィアは胸を張って前へ進めた。
エルヴィンの腕の中で、
そして自分の新たな才能とともに。




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