『ドレスに宿る誓い』―Elara & Lanois 王国を変えた仕立て屋たち―
次の日、
提出を済ませたエルヴィンは
大仕事をやり遂げた達成感に包まれていた。

だが、
講師が言った一言で青ざめる。
「発表会では作品のウォーキングをお願いします。モデルは各自で手配してね。」

――あ、忘れてた。

エルヴィンの背中に、冷たい汗がつーっと落ちた。

「ど、どうしよう……。モデルなんて、誰も頼んでない――」

項垂れるエルヴィンに
同じく課題を提出したエラが声をかける。
「あら、あなたは奥様に頼むものだと思ってたけど。」

エルヴィンは顔を上げる。
確かにエルヴィンの作ったドレスの寸法は
シルヴィアのサイズだ。
彼女なら立派に着こなしてくれるだろう。

けれどエルヴィンは
シルヴィアをモデルにするのは気が引けた。
バイロンに着せ替え人形のように扱われて
苦しんでいた彼女に
また同じ思いをさせるのではないだろうか。

しかし背に腹は代えられない。
その日の夕食の席で
エルヴィンは切り出した。
「今日、無事に課題を提出してきたよ。」

「まぁ、おめでとうございます。良かったです。」
にこやかに微笑むシルヴィア。
彼女も自分のことのように嬉しそうだ。

「それでね。ついうっかり失念していたのだけど。今度その課題の発表会があるんだ。俺はドレスを作ったから、発表会にはそれを着てくれるモデルが必要で——」
< 105 / 134 >

この作品をシェア

pagetop