『ドレスに宿る誓い』―Elara & Lanois 王国を変えた仕立て屋たち―
数日後、何度目かの仮縫い。

王妃は鏡の前で動いてみる。
腰をひねり、しゃがみ、歩き、回ってみる。

「いいわね、この軽さ……!」

エラの頬がぱっと明るくなる。
「本当ですか!?」

嬉しさに震えるエラを横目に、
王妃は軽くつま先で床を蹴って
バランスを確かめる。

その時。

「こうなってくると……」
王妃は鏡越しにエラに目を向けた。

「ズボンだけじゃなくて、上着も“おそろい”であった方が素敵なんじゃない?」

エラの頭の中で
パァァァァァッ
と花火が打ち上がった。

「上着……スーツ……女性のスーツ……!」

王妃は楽しそうにくるっと振り向く。
「女性だって、もっと自由に働けるべきでしょ?これからどんどん女性たちは世に出ていく。だったら服も自由じゃなきゃ」

その言葉が、
二人の未来を決定づけた。

こうして、
ウィステリア史上初の“女性用スーツ”
が生まれた。

全身に上質な布をまとい、
動きやすく、
それでいてエレガンスも保つ。

完成したスーツに身を包んだアリス王妃は
鏡の前でくるりと回り、

「こんなに軽やかに動けるなんて……!
エルヴィン、エラ。あなたたちの才能は本物よ」
と心からの賛辞を送る。
二人の胸は誇りでいっぱいになった。
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