『ドレスに宿る誓い』―Elara & Lanois 王国を変えた仕立て屋たち―
バイロンは彼女の周りを一歩、
また一歩とゆっくり歩き、
光の角度を確かめるように観察する。

「この白い髪、この透き通るような肌……。
 世界にひとりだけの存在です。どうか、私のモデルになっていただけませんか?」

「も、モデル……?
 い、いえ、私はそのような……。とても……とても無理です……」

シルヴィアは必死に手を振り、
丁重に断ろうとする。
こうした強い視線が苦手だし、
何より――私がそんなことをしても
幽霊みたいと笑われるだけだ、と。

何度断ってもバイロンは諦めない。
熱に浮かされたように何度も言葉を重ね、
彼女の美を賛美した。

当初、
エルヴィンはその様子を
横から静かに見ていたが、
やがて短く告げる。

「妻は疲れている。これで失礼する」

その言葉で会話は途切れ、
シルヴィアは密かに胸を撫で下ろした。

 ――だが、それで終わりではなかった。

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