『ドレスに宿る誓い』―Elara & Lanois 王国を変えた仕立て屋たち―
バイロンが描き上げた最初の肖像画は、
ラノイ侯爵家の客間に運び込まれた瞬間から、
義母の目を輝かせた。

薄いシルバーブロンドの髪は
夜明け前の光を集めたように輝き、
透き通る白い肌は
柔らかな光をまとっている。

バイロンのデザインした
淡いラベンダー色のドレスは、
シルヴィアの色素の薄さを
「欠点」ではなく「神秘」として
引き立てていた。

 ――白銀の妖精。

その呼び名は、
最初の展示会が開かれた翌日には
王都中に広まっていた。

街角のカフェで、
令嬢たちがその肖像を真似た
ドレスの色について語り合う。

商人たちはこぞって
同じ色合いの布地を仕入れ、
模倣のアクセサリーを並べた。

バイロンは一夜にして
花の都として名高い王都ラデスフローで
最も注目される若手デザイナーへと躍り出た。

そして――
その華やかな話題の中心にいるのは、
ほかでもないシルヴィアだった。
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