崖っぷち女子は屋上で拾ってくれた年下上司とスイーツ革命中

第6話 すれ違う温度


「大島リアさん、今までの五年間、長きにわたってコラボシリーズを
 ご担当くださってありがとうございました!」
会議室に広がる大きな拍手。

深く頭を下げた瞬間、胸の奥がきゅっと痛んだ。
(これが終わっちゃうなんて。もっと続けていたかったのに)

自分のデザインが他社ブランドの“顔”として世に出る――。

夢のようだった五年間。
それが今日で区切りを迎えるなんて、まだ実感が追いつかない。

重役たちが退出して静けさが戻ると、Y社の担当・三品さんと二人だけが残った。

自然と会話は“別れ”の話題になる。
「大島さん、本当に寂しいです。絶対また戻ってきてくださいね!」
「……はい。ありがとうございます」
「もし決まらなかったら、うちの会社もぜひ検討してください。
 雑貨企業なのでデザイナーとしては物足りないかもしれませんが…」

「そんなことないです。いつも本当に良くしてくださって……ありがとうございました」
柔らかい微笑み。
そのすぐあとに、ためらいのない声。
「もしよかったら、来週ご飯いきませんか?」
思わず瞬きした。

けれど、断る理由も浮かばない。

いつも丁寧で、明るくて、洗練された人。
「僕、金曜しか空いてないんですけど」
「大丈夫ですよ」
スケジュール帳に予定を書き込む。
(金曜日くらい、ヤマさんと話さなくても大丈夫だよね)
仕事の延長みたいな関係だし、執着しすぎるのはお互いに良くない
――
そう自分に言い聞かせた。

◆ ◆ ◆

予定の金曜日。
ランチへ向かおうとしたとき、後ろからミクちゃんの声が弾けた。
「大島さーん! お誕生日おめでとうございます!」
振り返れば、チームの子たちがかわいい入浴剤を差し出してくれる。
「ありがとう……! みんな、知ってたんだ?」

「当たり前ですよ〜。
 先輩、こっそりみんなのお誕生日お祝いしてくれてたじゃないですか!」
胸がじんわり温かくなる。

(こんなふうに誕生日を祝われるなんて、いつぶりだろう)

そのまま楽しい空気のままランチへ。

新しい職場や家族の話が飛び交い、未来の話題で笑顔があふれる。
(こんないいメンバーで働けてたんだ……)

改めて、今までのことが悔やまれる。

昼休みから戻ると、自分の席のキーボードに見慣れた筆跡の付箋。
――『今日行けます?』
ヤマさんだ。
指先が付箋に触れると、ほんの少しだけ熱が宿る。

(……どこか、行きたいところあったのかな)
自分でも驚くような期待が胸の奥でふくらみ、慌てて押し込めた。
すぐにLINEで送る。
“今日は予定があります。すみません”
既読がつくだけで返事はない。
(まあ……そういう距離感だもんね)
見えない線が引かれているような空気。

踏み込まない方がいいと分かっていて、そのまま仕事に集中した。
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