日本語が拙い外国人と恋仲になりました
 大野は、別れた頃と全く変わっていない。スラッとした長身も、整えられた髪型も、きっちり着こなしたスーツも。それに、馴れ馴れしい態度だってそうだ。最後に会ったときのまま何も変わっていなかった。
 私がずっと悩んでいたときも、この男はきっとのほほんと過ごしてきたのだろう。
 そう思うと怒りがこみ上げてきた。

「やめてください。あなたの顔すら見たくありません。私たち、他人なんですよ。関係ないんですよ? もう行きますから、そこをどいてください」

 冷たく突き放さないと、大野は確実に調子に乗る。
 奥さんも子供もいるくせに、何食わぬ顔で声を掛けてくるなんて。ろくなことを考えていないに決まってる。
 私が無言で大野の横を素通りしようとすると──

「待ってよ」

 いきなり腕を掴まれた。

 驚き、私がその手を振りほどこうとするが、ビクともしない。強い力で握りしめてくる左手の薬指には、シルバーに輝く指輪が。
 ──ゾッとした。一体、この男、何を考えているの?
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