私と僕の、幸せな結婚までのお話
エピローグ -ブルク侯爵視点-
ああ、今年も届いたのか。
毎年ルイーゼの誕生日に贈られるナイトレイ伯爵家族の肖像画だ。
体調が悪い日が続き、眠っている時間が増えている私にマリアが優しく声を掛けてくれ、背中に当てるクッションの位置を調整して絵を見やすい様にしてくれる。
相変わらず、まるでそこにいて声が聞こえるような幸せにあふれた家族の肖像画だ。
家族の肖像画になぜ君が居ないんだ? と言って以来、鏡に映る家族の肖像画を描く画家の姿が書き足されるようになった。
全く、彼らしい。
肖像画の天才、色彩の魔術師などの賞賛を受けるたびに、恥ずかしそうに眼を泳がせるレナート=ノア・ド・ナイトレイ伯爵を義息子と呼ぶようになって10年が過ぎた。
満開の桜の下で運命の出会いを果たした二人は、次の年の桜が満開の日、あの離宮で皆に祝福されて結婚式を挙げ、今は遠く離れたナイトレイ領で家族仲良く幸せに暮らしている。
遠方すぎて年に何度も会わせてあげる事が出来ないからと、レナート殿からは頻繁にルイーゼや孫たちの幸せそうな瞬間を切り取った小さなポートレートが届けられる。
今ではワイマー大公夫妻となったフィリップ様とココ様はあの北の離宮を居城として賜り、そこを拠点に医療技術と公衆衛生を広めるために国中を飛び回っている。
その旅程で毎年必ずナイトレイ領で数週間の休暇を過ごして交流を続けていて、王都に戻ると一番に私とマリアの元に訪れてナイトレイ領での土産話を聞かせてくれる。
先代のワイマー大公閣下は、フィリップ様とココ様夫妻に地位を譲った後、ルイーゼに請われてナイトレイ領に暮らしている。
孫娘夫妻とひ孫たちに大切にされて幸せに過ごす一方、意気投合したリリィ=ローズ殿の茶飲み友達兼、仕事の相談役として刺激的な体験もされているようだ。
ルイーゼを甚く気に入ったリリィ=ローズ殿は領地に戻るとルイーゼから離れず、レナート殿とルイーゼを取り合って喧嘩しているとか、ルイーゼの末の息子が生れ落ちると同時にまたもや勝手にミドルネームを付けようとして、命名権を主張するミレリア女侯爵と喧嘩していたとか。
当のリリィ=ローズ殿と言えば、爵位をレナート殿に譲ってから自由になった事でさらにパワーアップして国内外を駆け回っているようだ。王都に滞在するときには必ず我が侯爵邸に訪れて、ルイーゼや孫たちの近況を伝えてくれる。甥にはもったいない程の素晴らしい嫁だと毎回盛大に自慢しては春の嵐のようにあっという間に去って行く。女傑の名を手放す日はまだまだ先のようだ。
ルイーゼを送り出してからの10年、愛娘を手放した寂しさを周囲の温かさが支えてくれたことに感謝し、肖像画を眺めながらマリアとさまざまな思い出を語り合う。
ああ、少し疲れてしまったようだ。横になり額にマリアの口づけを受けて幸せな気持ちで眠りについた。
毎年ルイーゼの誕生日に贈られるナイトレイ伯爵家族の肖像画だ。
体調が悪い日が続き、眠っている時間が増えている私にマリアが優しく声を掛けてくれ、背中に当てるクッションの位置を調整して絵を見やすい様にしてくれる。
相変わらず、まるでそこにいて声が聞こえるような幸せにあふれた家族の肖像画だ。
家族の肖像画になぜ君が居ないんだ? と言って以来、鏡に映る家族の肖像画を描く画家の姿が書き足されるようになった。
全く、彼らしい。
肖像画の天才、色彩の魔術師などの賞賛を受けるたびに、恥ずかしそうに眼を泳がせるレナート=ノア・ド・ナイトレイ伯爵を義息子と呼ぶようになって10年が過ぎた。
満開の桜の下で運命の出会いを果たした二人は、次の年の桜が満開の日、あの離宮で皆に祝福されて結婚式を挙げ、今は遠く離れたナイトレイ領で家族仲良く幸せに暮らしている。
遠方すぎて年に何度も会わせてあげる事が出来ないからと、レナート殿からは頻繁にルイーゼや孫たちの幸せそうな瞬間を切り取った小さなポートレートが届けられる。
今ではワイマー大公夫妻となったフィリップ様とココ様はあの北の離宮を居城として賜り、そこを拠点に医療技術と公衆衛生を広めるために国中を飛び回っている。
その旅程で毎年必ずナイトレイ領で数週間の休暇を過ごして交流を続けていて、王都に戻ると一番に私とマリアの元に訪れてナイトレイ領での土産話を聞かせてくれる。
先代のワイマー大公閣下は、フィリップ様とココ様夫妻に地位を譲った後、ルイーゼに請われてナイトレイ領に暮らしている。
孫娘夫妻とひ孫たちに大切にされて幸せに過ごす一方、意気投合したリリィ=ローズ殿の茶飲み友達兼、仕事の相談役として刺激的な体験もされているようだ。
ルイーゼを甚く気に入ったリリィ=ローズ殿は領地に戻るとルイーゼから離れず、レナート殿とルイーゼを取り合って喧嘩しているとか、ルイーゼの末の息子が生れ落ちると同時にまたもや勝手にミドルネームを付けようとして、命名権を主張するミレリア女侯爵と喧嘩していたとか。
当のリリィ=ローズ殿と言えば、爵位をレナート殿に譲ってから自由になった事でさらにパワーアップして国内外を駆け回っているようだ。王都に滞在するときには必ず我が侯爵邸に訪れて、ルイーゼや孫たちの近況を伝えてくれる。甥にはもったいない程の素晴らしい嫁だと毎回盛大に自慢しては春の嵐のようにあっという間に去って行く。女傑の名を手放す日はまだまだ先のようだ。
ルイーゼを送り出してからの10年、愛娘を手放した寂しさを周囲の温かさが支えてくれたことに感謝し、肖像画を眺めながらマリアとさまざまな思い出を語り合う。
ああ、少し疲れてしまったようだ。横になり額にマリアの口づけを受けて幸せな気持ちで眠りについた。


