五つ子家庭教師は全員イケメン執事でした

プロローグ

お母さんがニューヨークで働いているせいで、
私は高校一年生なのに、日本の大きな家で一人暮らしをしている。

お金持ちの家って、もっとキラキラしてると思ってた。
でも実際は

「今日の夕飯、カップ麺かぁ……」

広すぎるダイニングで、私はひとりプリンをつついていた。
母は世界的企業アサヒナグループのCEOで、忙しすぎて日本に帰れない。
だからこの家は、広いのに静かすぎる。

そんな夜だった。

ピンポーン。

玄関のモニターに映ったのは
同じスーツを着た、見知らぬ男の子が五人。

「……え？　だれ？」

インターホン越しに聞こえた声は、驚くほど落ち着いていた。

『朝比奈あやめ様。本日より、あなたを担当いたします
雪城家、五兄弟でございます』

五兄弟！？

意味が分からないまま玄関を開けると、
映画のワンシーンみたいな青年たちが
完璧に揃ったお辞儀をした。

「初めまして、お嬢様。
本日から、あなたの家庭教師兼執事として
住み込みでサポートさせていただきます」

その瞬間、スマホが鳴った。

『あやめ。あなた一人じゃ心配だから、
優秀な家庭教師チームをつけたの。
みんな礼儀正しい子たちだから安心してね』

え？
ちょっと待ってお母さん。
家庭教師って……五人も！？

「本日より、あなたの家庭教師兼執事を務めます。
僕たちは五つ子です」

「ご、ごつ……五つ子！？　え、全員同じ顔！？　いや、ちょっと違う！？
ちょっと待って頭が追いつかないんだけど！」

一番落ち着いた雰囲気の男の子が微笑む。

「驚かれるのは当然ですよね。ですが、僕たちは全員同じ日に生まれた兄弟です」

「同じ日に！？　そんなこと本当にあるの！？　え、これって夢！？」

すると隣の明るい男の子が笑いながらウインクした。

「夢じゃないよ。ほら、触ってみる？」

「さ、触らないから！　近づかないで！」

五人は顔を見合わせて、同時に微笑んだ。

「これからよろしくお願いします、姫さま」

まるで物語の扉が急に開いたようで、心臓が跳ね上がった。

一歩前に出た黒髪の青年が、優雅に微笑む。

「これからどうぞ、よろしくお願いします。
朝比奈あやめお嬢様」

目の前の五人は
ドラマの登場人物みたいにキラキラしていた。

こうして、
私と五人のイケメン家庭教師との
にぎやかな共同生活が始まった。