激重シスコン皇帝は、勝ち気な姫に陥落する
薬のせいでぼんやりした意識の中で、
扉に向かうビンセントの背中が
急に遠く感じた。

ふと胸が締めつけられて、
気づいたら声が漏れている。
「……行かないで。」

掠れた、頼りない声。
その一言で、
ビンセントがビクッと足を止める。

ルチアは自分が言った言葉に気づいた瞬間、
一気に顔が熱くなり、
枕までぎゅっと掴んでしまう。

「ち、違っ……いえ、その……」
声が掠れてうまく言い訳できない。

少し間が空いた後、
振り返ったビンセントは、
“嬉しさ”と“動揺”と“理性の破壊音”が
顔に全部出ていた。

でも本人は平静を装おうとして、
逆にちょっと声が低くなる。
「……お前、弱ってるときだけ素直になるんだな。」

ほんのり笑っているけど、
その目は「可愛い……」と叫んでる。
目は口ほどに物を言うとは正にこのことだ。

しかし、
ルチアが真っ赤になって俯いているのを見ると、
もう抑えきれない。
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