激重シスコン皇帝は、勝ち気な姫に陥落する

婚約が既成事実化!?

ルチアがドラゴニア帝国に来てから
はや数週間。
ビンセントとの距離は確実に縮まり、
彼に向けるまなざしも、
以前のような「苦手な皇帝」ではなくなっていた。

焚き火の夜を過ごし、
馬の背で感じた温もり、
雨宿りの山小屋で見た男らしい姿。
そして何より、
彼女の声がかすれ、弱っていたあの日、
真剣に焦って、
必死に寄り添ってくれた彼の姿が、
ふとした瞬間に胸を締めつけてくる。

……ただ、同時に思うのは。

この帝国はあまりに“巨大”すぎだ。

廊下の端が霞んで見えるほどの宮殿。
侍女や兵士の人数は
アズールティアの人口に匹敵しそうで、
何をするにもスケールが桁違い。

「万が一、ビンセントと結婚したとして……私、本当にこんな場所で暮らしていけるのかな」
ふと漏らした独り言は、
重たい鉛のように胸に沈む。

その不安を察してか、
ビンセントはますますルチアに優しくなった。
暇さえあれば彼女を探し、
王の仕事の合間には必ず顔を出す。

ビンセントが帝国の皇帝でなければ……
そう思うほどには、
ルチアの心もビンセントへと傾いていた。

そして、
ついにその日が来てしまう。
< 61 / 111 >

この作品をシェア

pagetop