総長は姫を一途に溺愛する。
 「桜井ひまり……いいか?」

 振り向くと、転校生の背の高い少年が立っていた。
 黒髪で切れ長の瞳、冷静な顔。なのに視線は私だけに集中している。

 息を整えた彼は、教室の誰も見ないような静かな声で言った。

「……俺、ひまりのことが好きだ。
 今日初めて会ったのに……もう、我慢できない」

 心臓が跳ね、頭の中が真っ白になる。
 
「え、えっと……そんな急に……」

 声も震える。どう返せばいいかわからない。

 その瞬間、教室のドアが勢いよく開いた。

「――ひまり!」

 駆け込んできたのは、蓮先輩だった。
 目の奥に怒りと焦りが混ざり、全身から独占欲があふれている。

 私は二人の間で固まったまま、呼吸が止まりそうになる。

 転校生は眉をひそめて挑戦的に言った。

「誰が相手でも関係ない。ひまりが好きなんだ」

 それに対し、先輩は一歩前に出て、私の手をぎゅっと握った。

「……お前、誰だ?俺の前に立つな」

 低く響く声。怒りと独占心が混ざった声に、胸がぎゅっと締め付けられる。

 ――どうしよう、こんなに目の前で争われるなんて……
 私の心臓は、どうにかなりそうなくらい早く打っている。
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