たった100秒間の運命
第2章
「高坂さん、休憩どうぞ〜!」
一足先にお昼休憩に行って戻ってきたらしい坂井さんと斉藤さんが、お弁当が入っていたであろう可愛らしいランチバッグを持ったまま私の席にやってきた。
坂井さんは軽やかな様子でかけてくるが、斉藤さんはまた大きくなったお腹を抱えゆっくりと歩いてくる。
「ありがと。わざわざここまで来なくてよかったのに」
あとひと月ほどで産休に入る斉藤さんを気遣うと、彼女は「運動も大切なんです」と力強く笑っていた。
「よし、じゃあ行ってくるね」
ぐぐっと伸びをして、その場に立ってにこにこしている二人をもう一度見る。
「どうしたの?」
いつもなら報告だけしてすぐに仕事に戻る二人。
その表情は心なしか機嫌が良さそうに見えて、私は頭の上にはてなマークを浮かべた。
坂井さんは、にやにやが隠しきれていない様子で私の近くへと足を進めた。
「実はこの間、高坂さんが男性といるの見ちゃって!彼氏できました?」
思いがけない台詞が飛び出し、私は思わず立ち上がった。
いや、何もない。何もないし、100%その目撃情報は憩さんだ。
それでも社内で変に噂になるのは避けたい。
周りに聞かれていないか様子を伺いつつ、声を落として続ける。
「違う違う。そういうのじゃないの」
「ほら、坂井さんの早とちりだったじゃない。すみません、高坂さん……」
「え〜でも楽しそうだったんだよ。時間の問題なんじゃないですかっ!私応援します!」
違うと言っているのに応援されると言われても。
私は思わずため息をひとつ。
「違うのに応援したって仕方ないでしょ。ほら、バカなこと言ってないで仕事して」
「はーい。何か進展あったら教えてくださいね!」
坂井さんは納得していない顔のまま、斉藤さんを引き連れて席へと戻って行った。
ママさんグループが休憩に行っている時間でよかった。
聞かれていたら、今度は私が美味しいお茶菓子にされるところだった。
男女が二人いれば、それは恋愛であり、28後半の女性が恋愛をしていれば、結婚が視野に入る。
結婚すればすぐに子供だ。
可愛い後輩とはいえ、自分が乗っていないはずのレールに勝手に乗せられていくのは、幾分か気持ちが悪い。
……勘弁してよ。
私は、不穏な気持ちを隠すように、足早にオフィスを後にした。
一足先にお昼休憩に行って戻ってきたらしい坂井さんと斉藤さんが、お弁当が入っていたであろう可愛らしいランチバッグを持ったまま私の席にやってきた。
坂井さんは軽やかな様子でかけてくるが、斉藤さんはまた大きくなったお腹を抱えゆっくりと歩いてくる。
「ありがと。わざわざここまで来なくてよかったのに」
あとひと月ほどで産休に入る斉藤さんを気遣うと、彼女は「運動も大切なんです」と力強く笑っていた。
「よし、じゃあ行ってくるね」
ぐぐっと伸びをして、その場に立ってにこにこしている二人をもう一度見る。
「どうしたの?」
いつもなら報告だけしてすぐに仕事に戻る二人。
その表情は心なしか機嫌が良さそうに見えて、私は頭の上にはてなマークを浮かべた。
坂井さんは、にやにやが隠しきれていない様子で私の近くへと足を進めた。
「実はこの間、高坂さんが男性といるの見ちゃって!彼氏できました?」
思いがけない台詞が飛び出し、私は思わず立ち上がった。
いや、何もない。何もないし、100%その目撃情報は憩さんだ。
それでも社内で変に噂になるのは避けたい。
周りに聞かれていないか様子を伺いつつ、声を落として続ける。
「違う違う。そういうのじゃないの」
「ほら、坂井さんの早とちりだったじゃない。すみません、高坂さん……」
「え〜でも楽しそうだったんだよ。時間の問題なんじゃないですかっ!私応援します!」
違うと言っているのに応援されると言われても。
私は思わずため息をひとつ。
「違うのに応援したって仕方ないでしょ。ほら、バカなこと言ってないで仕事して」
「はーい。何か進展あったら教えてくださいね!」
坂井さんは納得していない顔のまま、斉藤さんを引き連れて席へと戻って行った。
ママさんグループが休憩に行っている時間でよかった。
聞かれていたら、今度は私が美味しいお茶菓子にされるところだった。
男女が二人いれば、それは恋愛であり、28後半の女性が恋愛をしていれば、結婚が視野に入る。
結婚すればすぐに子供だ。
可愛い後輩とはいえ、自分が乗っていないはずのレールに勝手に乗せられていくのは、幾分か気持ちが悪い。
……勘弁してよ。
私は、不穏な気持ちを隠すように、足早にオフィスを後にした。