真昼に見た夢 -ヴァージンドロップ-
「ちなみに聞くけど、その犬、雌?」

ママは私が大して何も意見がないと思ったのか質問を変えた。

「雄だよ。」

「げっ。この家がこれ以上雌だらけになるのも勘弁だけど…男かぁ。」

「雄だと面倒?」

「何の生産性もない男がまたやって来るのか…。あるのはちょっとしたユーモアだけ。」

確かに、我が家にはママ曰く『お金以外は全くもって役に立たない』ちょっと面白い男の人が歴代何人も住んでいた。

ここ数年はママに生活力がついたので、母ひとり子ひとりで暮らしているけれど

ちなみに少し裕福になったので、私も犬を飼いたいというワガママが言える訳だけど…

「ママ?確かに雄だけど犬だよ?」

「叶愛ちゃん!」

私の両肩に手を置いて、私の瞳を真剣に見つめながらママは言った。

「犬だってひとりの男だよ?」

「何それ?」

「アンタが生まれる前にお世話になった男の決め台詞〜♪」

ママは楽しそうな足取りでコーヒーを片手に自分の寝室へ向かう。

「あ、どうせなら可愛い可愛い叶愛ちゃんついでに犬も売れないかしら。ね?」


ママの事は大好きだけれど、よくぞマトモに育ったと自分で自分を褒めたくなる。


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