こじらせCEOの壮大すぎる初恋計画 〜二代目女社長、冷徹なライバルに理不尽な政略結婚を迫られたはずが、すべては22年前からの策略でした!?〜
 今日の夕食はグラタンだった。
 とろりとしたクリーミーなソースに、こんがりと焼けたチーズ。
 オーブンから出したての熱々の状態がたまらない。

「おいしい」
 なぜかこの男と夕食を一緒に食べることが日課になってしまった。
 しかもおいしすぎて困る。

「お店みたい」
「そうか」
 遥がハフハフしながらグラタンを頬張ると、隼人はホワイトソースも手作りだと遥に自慢した。

「どうやって作るのよ」
「バターで小麦粉を焦がさないように炒めて……」
 簡単そうに説明されたがたぶん作れないと遥は肩をすくめる。
 料理はまったくできないのだと遥は正直に暴露した。

「できるようにならなきゃとは思うけれど」
「作りたいのか?」
「うーん、女性だったら料理くらいできるべき?」
 正直このグラタンよりもおいしいものができあがる自信はないけれど。
 
「やれる人がやれば良くないか?」
 男とか女とか関係ないだろうと言われた遥は目をパチパチさせた。

「……アメリカ暮らしが長いから?」
「そんなに変なことを言ったか?」
 共働きが増え、家事を手伝う男性が増えたと言っても、まだまだ日本では家事は女性がするものというイメージがある。
 普段やらなくても女性だったら料理はできて当然、掃除も洗濯も。
 メインは女性で、ときどき男性が手伝ってあげるよという印象だ。

 正直言って、黒豹みたいな俺様CEOがそんなことを言うなんて思いもしなかった。

「ちょっとトラウマがあって、包丁とか怖くて無理なのよ」
「俺がやるから問題ない」
 アラサーでまったく料理ができないなんて馬鹿にされるかと思っていたのに。
 遥はさほど気にしていない隼人に驚き、目を丸くした。
 
「あ、そうだ。今日、山本製薬の会長さんが来てくれてスポンサー契約を結んでくれたの」
「よかったな」
 樽熟成させたシャルドネの白ワインを優雅に飲む隼人に、遥は改まって頭を下げた。

「ありがとう」
「俺は連れて行っただけだ」
「きっかけをくれて本当に感謝してる」
 売り上げを倍にするには全然足りないけれど、社員たちの喜ぶ顔を見ることができたと遥は話した。
 人脈も実績もない自分では絶対にできない営業方法だったと。

「……ちゃんと読んだか?」
「え?」
「契約書」
 隼人はワイングラスをテーブルに置くと遥の顔をジッと見つめた。

「見たわよ!」
 契約書くらいちゃんと読むわよ。
 
「動画の広告サイトの名前は?」
「確か……MMAC? 業界大手の有名なところだから大丈夫よ」
 詐欺じゃないわと遥は訴える。

「Mamiya Movie Advertisement Corporation」
「……は?」
「俺の会社だ」
 おまえが儲かると俺も潤うと、隼人は口の端を上げながら微笑んだ。
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