こじらせCEOの壮大すぎる初恋計画 〜二代目女社長、冷徹なライバルに理不尽な政略結婚を迫られたはずが、すべては22年前からの策略でした!?〜
「昨日何していたんだよ、映画行こうって誘ったのに」
「あー、ごめん。二日酔いで死んでた」
「えぇ? 昨日二日酔いだったのに、今日また飲んでるの?」
 大丈夫? と心配してくれる富樫と、ハルカらしいと笑う佐久間と肉を食べながら盛り上がる。

 先日のお嬢様が強烈だったと、お嬢様イコール清楚な大和なでしこを期待していた庶民の夢を崩されたと佐久間が熱く語ると、富樫は冷静にそんなもんだよと笑った。

「ねぇ、ハルカちゃん。こないだ来ていた山本会長なんだけどさ」
 富樫から広告運営会社のMMACって知っている? と聞かれた遥は気まずそうに微笑んだ。

「詳しくは知らないけれど、大手の会社でしょ」
「うん。ここのCEOがM-ADCと一緒だって知っている?」
「え? マジかよ」
「あー、あとで知ったの」
 さすが天才富樫。私が気づかなかったことにあっさりと気づくなんて。

「……ねぇ、ハルカちゃん。M-ADCのCEOとどういう関係?」
「えっ?」
「こないだ来てたよね」
 遥は視線を泳がせながらビールを飲み、大きく息を吐いた。
 佐久間と富樫ならみんなにバラすことはないと思うけれど、株を100パーセント自分が保有しているからインサイダー取引は絶対にしないと誓えるけれど。
 でも、吸収合併されそうだということを二人に話すことはやっぱりできない。

「実はね、お父さんの知り合いだったみたいなんだけど」
 でも名刺にも取引先にも自宅にあった父の交友関係のリストにもM-ADCとのやり取りはなかったと遥は二人に打ち明けた。

「ハルカちゃんの知り合いではないの?」
「私の?」
 首を傾げた遥を見た富樫はなぜかホッとしているように見えた。

「なんかされたらすぐ言えよ」
「ありがと佐久間」
 次の肉を買いに行き、ビールも追加し、流行りのアーティストや映画の話で盛り上がる。
 朝10時から並んで食べ始めたのにあっという間に夕方に。

「食べ過ぎた!」
「俺も満腹!」
「もう無理」
 全種類は無理だったがかなり食べたのではないだろうか?
 おなかいっぱいで夕飯は食べられそうにない。
 隼人に夕飯はいらないと連絡しないといけないと今さら気づいた遥はスマートフォンを取り出した。

 あ、連絡先、知らない。
 
「どしたの?」
「あー、連絡を取りたかった人がいるんだけど、連絡先知らなかった」
「そんなのアリかよ」
 ゲラゲラ笑う佐久間も、ふふっと控えめに笑う富樫もだいぶ酔っているみたいだ。
 
「帰ろうか」
 ゴミを片付け酔っ払い三人で歩き始めたが、混雑した会場はかなり歩きにくかった。

「迷子になるぞ」
「ハルカちゃん駅こっち」
 右手には佐久間、左手には富樫。

「子どもじゃないし! 二人で捕まえなくてもいいじゃない!」
「いいだろ。混んでいるし」
「そうそう。駅までね」
 変だと思いつつ、酔っぱらった遥はそれでもまぁいいかと駅に向かう。

 あ、マズい。
 全然よくない。
 駅前で待つ黒豹のような男がこちらをジッと見ていることに気が付いた遥は、いっきに酔いが醒めた気がした。
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