こじらせCEOの壮大すぎる初恋計画 〜二代目女社長、冷徹なライバルに理不尽な政略結婚を迫られたはずが、すべては22年前からの策略でした!?〜
 その2件は工場ではなかったため大きな問題にはならず、元のシステムを別のパソコンに再インストールしたら使えたので対策はされなかったそうだ。
 
「再インストールしたパソコンに、わざわざ取説なんて入れないから」
「再現しないという過去の調査結果を見たカスタマーサービス部が、シラカワ製作所にうちのせいではないと回答していた」
 そういえば白河もM-ADCのせいではない、調査するなら1週間かかると言われたと怒っていた。
 でも過去の問い合わせ事例と照らし合わせたら、今回も前の2件と同じように別のパソコンに再インストールしたら直ると言ってしまうかもしれない。
 実際に、富樫がツクモのパソコンにインストールした出荷検査は使えたのだから。

 ただ問題は小さな工場には余っているパソコンもないし、すぐにインストールと設定ができる人がいないことだ。
 どうしようもなくなり、ツクモに電話をくれた白河の気持ちがよくわかる。
 困ったときに頼ってもらえたのは父のおかげだろう。
 私も早く頼ってもらえるようになりたい。

「開発部には急いで対策させているがもう少しかかるだろう。営業部は謝罪に回っている」
「シラカワ製作所にも謝罪が来たって」
「あぁ。今日行ってきた」
「えっ?」
 行ってきた? 行かせたではなく?
 隼人が行ったってこと?

「もしあの日出荷できなかったら、シラカワ製作所は組み立て工場から損害賠償を請求されていたかもしれない。最悪の場合、シラカワ製作所が廃業だった可能性もある」
「……だからCEOが自ら謝罪に?」
「当然だろう」
 うちのような小さな会社なら社長が謝罪するのはわかる。
 でも大企業は謝罪なんて部長ですませそうなのに、この人は違うんだ。
 
 あの日もシラカワ製作所のパソコンを直してくれたし、そのおかげでうちの会社が契約更新してもらえたのに文句も言わない。
 営業二人は最悪だったけれど、この人は信頼できる。
 M-ADCが大企業になったのは、やっぱりこの人の人柄なのだろう。

 どうしよう。
 初めて会った時は強引で最低な男だと思っていたのに、たった一ヶ月で隼人のことが気になって仕方がない。
 がんばらないと、あと五ヶ月で会社が取られてしまうのに。

「今日はアジでいいか?」
「あ、うん。まかせる」
 胃袋もしっかりつかまれているし!
 しっかりしろ、私!
 
 あんな完璧人間をどうやったら倒せるのかと考えたが、なにひとつ勝てそうなものは見つからないなと遥は肩をすくめるしかなかった。
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